長年勤めていた会社を退職しようとするとき、「退職の意思表示」を伝えるタイミングを見計らうのは、意外に難しいものです。とくに、転職経験がない場合で、退職の理由がポジティブなモノである場合に、その傾向が見られます。
45歳で22年勤めた会社を退職することにしたTさん。
2020年4月から転職することを決め、退職の意思表示をしたところ、想定外に慰留されてしまいました。
そのTさんから、お問い合わせをいただきました。
「転職することを上司に伝えたところ、慰留されました。ある程度は想定していたものの、直属の上司である課長に加えて、部長とも面談することになってしまいました。」
「慰留されたとしても、退職する意思は変わることはありません。でも、長年お世話になった上司なので、無下に断るわけにはいかず、やむを得ず部長との面談を了承しました。」
「ほんとうは、年内でけりをつけたかったのですが、年明けの1月5日に部長と面談することにしました。」
「退職の意思は変わりません。しかし、部長からは、冷静に気持ちを整理した上で会って話したいと言われました。部長と、どんな話をすればいいでしょうか?」
Tさんの悩みの原因
部長から慰留面談の申し出があったとしても、それを受ける受けないは自分次第のはずです。しかも、すでに退職することを決めているならば、義理立てすることを考えなくてもいいはずです。
しかし、22年間、一つの会社で勤務してきたTさんにとっては、退職することになった会社であっても、上司からの申し出は断りづらかったのです。
「退職」という区切りをつけることを決めていても、長年働いてきた会社であるがゆえに、「上司」という存在を無視できないということ。これこそが、Tさんの悩みであることを私は気づき、伝えました。
思い込みを外すこと
「Tさん。なぜ、部長と面談しようと思ったのですか?」
Tさんは答えました。
「部長が私と面談できなかったら、いろいろと困ると思ったので。」
私は、Tさんに続けて問いかけました。
「たしかに部長は困るでしょうね。そのことを思うTさんは素晴らしいと思います。でも、もし部長と面談したくないとTさんの内心が感じているならば、Tさんが面談に応じたときをイメージしてみてください。Tさんの内心は困ったりしませんか?」
3分ほどの沈黙の後、Tさんは答えました。
「たしかに、自分も困ってしまいます。。。もともと、転職しようと考えた一つのきっかけは、「自分の気持ちに正直になる」ことでした。部長との面談を気にすること自体が、それとは違いますね。」
「変な思い込みがありました。上司の言うことには従わなければ、という。」
Tさんの悩みの本質
Tさんが部長との面談への対処で不安に感じたことは、「上司の命令には従わなければならない」という思い込みがあったことでした。しかし、本当の理由はそれだけではありませんでした。
本当の理由は、「転職の理由をどこまで伝えるべきか。」ということだったのです。
Tさんのアタマの中は、
「上司からの命令」→「転職理由を聞かれる」→「具体的に話さないと自分の退職理由を納得してくれない」→「なるべく面談したくない」
という感じで、悩みがグルグル回り続けていたのです。
このテーマは明日も連載します
「転職理由をどのように伝えるか」
シンプルですが、対応を誤るといささか面倒なことになりかねません。
とくに45歳からの転職では、転職先でマネジメントを任される可能性が高いので留意が必要です。
端的に退職理由を伝えればそれで良いものの、伝え方の要点を押さえておかないと、思わぬ事態に遭遇してしまいます。
「転職理由をどのように伝えるか」をテーマに、明日も連載します。
明日は、どこまで伝えるか、どのように伝えるかを、相談事例に基づいてお伝えします。
本日も、お読みいただきありがとうございました。