上司という役回りは、部下とともに仕事を達成した喜びや部下の成長を目の当たりにする楽しさがあります。難しい課題をクリアするためには、組織の力を束ねる必要があります。上司と部下は立場は違ってもお互いの歯車がうまくかみ合うと、大きな力となって、難しい課題を達成することができます。
一方、部下を持つことは、上司の悩みの種でもあります。
部下が思うように動いてくれない
部下の仕事の出来栄えが今一つで、結局自分で仕上げてしまう
部下に成長意欲を感じない
40代を過ぎて責任ある立場を任せられると、こういった悩みを抱えがちです。
どうせならば、部下と意思疎通を密にして、活気あるチームを作りたいものです。それは、部下のため、組織のためであることはもちろん、自分のためでもあります。組織マネジメントができることは、組織において存在価値のある人材として評価されることにつながるからです。
【目次】
部下を動かそうとするときに起きる【マイクロオペレーション】
部下が思うように動いてくれないと感じると、心理的に部下のことを信頼できなくなります。不思議なもので、信頼できなくなると「粗」ばかりが目立つようになり、それを矯正するために教育的指導がコミュニケーションの大部分を占めるようになります。
教育的指導と言えば聞こえがよいですが、要するに【マイクロオペレーション】をするようになります。つまり、事細かに指示命令し、部下を動かそうとするのです。
「この仕事は、こういう手順で進める」
「あ~、その手順じゃダメダメ」
「なんで、こういう結果になるのかな。もっと考えてくれよ。」
仕事の出来栄えを気にするがあまり、【マイクロオペレーション】してしまうのです。
こうなると、上司として【マイクロオペレーション】する自分にも嫌気がさしてきますし、部下も委縮してしまいます。「言ってもしょうがない」という焦燥感を持つようになるのです。
鉄則1:仕事を部下に任せる胆力
部下の成長意欲を刺激するには、部下の本来のチカラよりも少し背伸びした仕事を任せることが必要だと言われます。私自身も、「この仕事を任せられるのは、少し負荷が高い」と感じた仕事をやり遂げることで、自分の基準が上がり、結果として仕事の幅が広がった経験があります。
しかし、仕事を部下に任せるためには上司としてある程度「我慢」することが求められます。部下は自分の本来のチカラを超えた仕事に取り組んでいるため、何度もやり直します。トライ&エラーを繰り返すことで、仕事の完成度を高めていくことが必要だからです。
このトライ&エラーを上司として見守るという胆力を身につけなければいけません。
これは、言うのは簡単ですが実行が難しい。
限られた時間の中で、一定のアウトプットを出す必要があるとき。
突発的に生じた案件を、迅速に解決する必要があるとき。
こういうときこそ、部下に仕事を任せることが成長につながるのですが、いずれも時間的猶予がないと、【マイクロオペレーション】をしてしまいがちになります。
鉄則2:小さなことから始める
部下がルーティンワークを中心に仕事をしているならば、仕事の与え方を少しずつ変えてみることが必要になります。具体的には、最終アウトプットのイメージを適切に伝え、それを実現するためのプロセスは一切部下に任せることにトライしてみることが必要です。要するに、「自分で考えて、自分が責任をもって解決する」仕事を体験してもらう機会を創るということです。
バブル入社組までは、会社の中に良い意味での余力がありました。上司のみならず先輩が要所要所でフォローしてくれる機会があったのです。しかし、景気低迷が続いたことから、会社は効率化を勧めざるを得なくなり良い意味での余力はなくなりました。
その結果、小さな成功体験を積む機会は減りました。効率化の名の下、仕事が作業化・分業化されてました。その結果、「課題に対して自分で解決するストーリーを組み立て、行動する」機会が減ったのです。
鉄則3:上司としての立ち振る舞い
環境が変わったことを理由にしたくなる気持ちはわかりますが、環境変化への適応力が、存在価値のある人材として必要な要件です。部下が自発的に動き、仕事を自分事として取り組むようになるためには工夫が必要です。
もっとも、その工夫の根幹はいつの時代も変わりません。
それは、上司として仕事の目的・ミッションを示し、目標を部下と共有することです。そして、部下と目標を共有するとき、具体的なゴールイメージも共有し、それに至るプロセスは部下に任せるということです。
教科書的ですが、これ以上でもこれ以下でもありません。
文字にすれば簡単で当たり前のことを実践することが難しいため、部下が思うように動いてくれないと感じるのです。
まとめ
上司として仕事の目的・ミッションを示し、目標を部下と共有することです。そして、部下と目標を共有するとき、具体的なゴールイメージも共有し、それに至るプロセスは部下に任せるということ
これを実践するためには、部下とコミュニケーションを密にとらなければいけません。
「背中をみて動く」ということを期待せず、「言葉」で適切に伝えることが必須です。
仕事のことだけでなく、日常的な会話を上司から働きかける工夫が求められています。
「そんなことは上司の仕事ではなく、逆に部下からコミュニケーションを取るべきだ。そこを忖度することが部下の役割だろう!」という考えもあろうかと思いますが、今の時代にはマッチするものではありません。
上司が部下の業績創出にコミットするという点でも上司からコミュニケーションをとることは、極めて重要なマネジメントアクションだからです。
そして、このことを実践できるようになれば、組織の力は向上しますし、部下も自発的に動くようになります。「部下が動かない」ではなく「部下が動く」という組織運営を実現できる人は多く存在しません。それゆえに、これができる人は、会社にとって存在価値のある人材となるのです。
40代を過ぎて責任ある役割を任せられるとき、今回お伝えした3つの鉄則を意識すると会社も部下も、そして上司である自分も、活力を得ることができます。
そうなると、組織マネジメントが楽しくなるはずです。