サラリーマンであるかぎり、自分が想定しない人事異動を受け入れざるをえません。
自分が望む部署への異動ならばまだしも、配属されたくない部署への異動を受け入れるには相応の時間が必要です。
40歳を過ぎてから配属されたくない部署へ異動となったとき、「会社は自分を評価していないのではないか?」との思いを抱きかねません。そして、そのことが原因となって、「転職」を考えはじめることもあります。
私は42歳のときに自分がまったく希望しない部署への異動を命じられました。仕事の領域は異動前と同じ人事系でしたが、前任者が担っていた役割を「軽いポスト」と私は感じていたため、左遷させられたと感じました。
そういう思いで仕事をしていましたから、仕事に身が入らない日々を過ごしていました。そんなとき、偶然目にした公募をチャンスと感じました。
「自分が認めてもらえる機会」と捉えて飛びついたのです。
しかし、いま、当時を振り返ると「こうしておくとよかったかな?」と思うことがあります。もしかすると、その思いを実行していたら転職しなかったかもしれないからです。
40歳代の転職は、相応の準備と覚悟が必要です。
そのためには、最低限、押さえておくべきことがあります。
そこで、今回は自分が希望しない部署へ異動したときに、試しておきたい3つのチェックポイントをお伝えします。
【目次】
不満の要因を特定する
「こんなくだらない仕事、やってられるか!」
自分が希望しない部署へ異動した当初、私は日々こういう思いを持っていました。
自分の上司が気に入らない
自分の仕事が下請け的仕事で気に入らない
軽いポストの仕事につけられたから気に入らない
こういう思いを解消できずに悶々とした日々を過ごしていました。不満がなぜ自分の内心に湧き起こるのかということに目を向けずにいたのです。「環境が悪い」という決めつけをして他責化していたとも言えます。
今思えば、こういう気持ちの要因になったことを丁寧に特定すべきでした。
私の場合、「自尊心が傷つけられた」ということが要因だったと、転職後に気づきました。あまりの料簡の狭さに滅入りました。このことが転職の後悔につながってしまったと思います。
後悔を完全に払拭するのに3年かかりました。今は良い経験だったと総括できますが、当時は辛かったです。
こんな思いは抱かない方がいいに決まってます。
そうならないために不満に感じている要因を丁寧に特定することが重要なのです。
自分のキャリアにおける異動の意味づけ
人事部で働いていましたので、自分が希望しない部署へ異動する社員には「自分なりに異動を意味づけすることが大切」と高説をたれていました。(今思えば恥ずかしくなります。)
しかし、自分の目の前にそういう出来事が起きたとき、自分のキャリアにおける意味づけできませんでした。「自分でキャリアを築いていくためには、今この会社ではない。」という思いを持ってしまったからです。そして、転職という選択肢をとったのです。
今思えば、転職するのではなく、自分が希望しない部署への異動を受け入れることも自分のキャリアを広げる選択肢だったのではないかと感じています。
私の場合、転職は現実逃避の要素が強く、自分が希望しない部署で「仕事をやりきった」という実感が持つことができなかったからです。
私に不足していた意識は、「自分が組織にどのように貢献するか」という意識です。
長年サラリーマンをやっていたので、心のどこかに受け身な自分がいました。「自分が組織にどのように貢献できるか」という意識が強かったと思います。
「どのように貢献するか」と「どのように貢献できるか」では、主体的なかかわりが異なります。前者の方がより主体的であり、自律的です。
「自分が組織にどのように貢献するか」という意識で不本意な人事異動をとらえたとき、前向きになれる自分を発見できます。
自分が望まない部署への人事異動は自分にとってはある意味不運なできごとです。不運の渦中にいるときは、こういうあたりまえの思考を持ちづらくなります。
そこで、「自分が組織にどのように貢献するか」という意識をもつことで、自分のキャリアにおける意味づけを組み立てるのです。
私の場合、転職する前まで「自分が組織にどのように貢献できるか」という意識が強かったのですが、転職した後は「自分が組織にどのように貢献するか」という意識に変わりました。
新天地で自分の存在価値を表すためには受け身でいることはできなかったからです。私は、転職したことでこのことを体感しましたが、転職することなく異動した部署で仕事をやりきることでも体感できたのではないかと感じています。もし、転職を考えはじめた当時に私がそういう意識になっていたら、おそらく転職という選択肢はとらなかったと思います。
自分が所属している会社は好きか?自問自答する
会社は組織ですから様々な役割・機能をもった部署で構成されています。会社という組織で働くということは、自分の専門性を活かして働くということだけではなく、働くことで付加価値を創り出し貢献することも求められます。
そこで、あえてシンプルな問いを自分にしてみることです。
「自分は今の会社のことが好きか?」
そもそも、今自分がいる会社に入社したのはなぜなのか?を自問自答するということです。
社会的に存在価値のある会社だから
働いている人たちがよい仲間だから
自分が学んできたことを活かせるから
ひとによって、さまざまな理由があると思います。「好き」なところが見つからない場合は、「なぜ、今の会社を選んだか」を自問自答することでもよいです。
「好き」なところが見つかれば、自分が組織に所属する意義を見出すことができます。自分の大切な人生をかけて、今の会社に所属する目的を再発見することも可能になります。
自分が今の会社に所属する意義や目的を再発見できたら、それと自分が望まない部署へ人事異動の意味を重ねわせてみるのです。
重ねわせてみると、自分の役割を再認識できます。自分を活かすことができるというプラス思考で取り組んでみることを前提に、是非ためしてみてください。
まとめ
自分が希望しない部署への人事異動を受け入れることは簡単ではありません。砂を噛むような思いを抱き続けることもあるでしょう。
しかし、自分が希望しない部署への人事異動が要因となって40歳代の転職をしようと考えるならば、慎重に準備すべきです。短絡的に決断してはいけません。
今回お伝えした3つのチェックポイントは、冷静な自分を保ち適切な判断をするために役立てていただきたいです。
この3つのチェックポイントは、自分が働く意義や目的を帰路に立ったときに振り返るために有効です。
40歳代の転職は焦ってはいけません。自分が働く意義や目的の延長線に転職という選択がなければ、転職しないことが豊かなキャリア形成につながると、私は考えます。