今朝の日経新聞に「ベテラン転職 活況」と題した記事を見つけました。
総務省労働力調査(2016年度)によると、転職者数は306万人で、2009年以来8年振りに300万人を超えていることがわかります。(注:ここで言う転職者とは、就業者者のうち前職のある人で、過去1年間に離職を経験した人を指します。)
さらに年齢階層別に調査を年齢階層別に見ると、45歳以上が全体の約35%にあたる120万を占めています。60歳定年後の雇用延長策の影響を勘案してみても、45歳から54歳の年齢階層で、転職者数は50万人、全体の16%を占めていますから活況という表現にもうなずけます。
就業者に占める転職者の割合を示す転職者比率は、2006年以来5%前後で推移していますが、45歳から54歳の年齢階層で、3.5%を占めていることがわかります。
労働力移動が活発である25歳から34歳の年齢階層で、6.9%であることを考えると、転職者比率の点でも、45歳以上の転職市場が動いていることがわかります。
もっとも、活況をおびているとはいえ、45歳を過ぎてからの転職を成功させるには気をつけなければならないことがあります。
今回は、その世代の特徴から、少なくとも意識しなければならないチェックポイントを3つお伝えします。
【目次】
1.45歳から54歳の階層の特徴
いわゆるバブル入社世代は、この年齢階層に属しています。この世代は、好景気の影響で就職氷河期と比べものにならないほど、就職活動に困ることはなかった世代です。
一方、大手企業を中心に大卒が大量採用され、バブル崩壊に伴う影響をダイレクトに受けた世代でもあります。
たとえば、バブル崩壊によって大手企業を中心に年功序列型人事制度を改め、成果主義型人事制度に移行し始めた時期に、管理職に登用される年齢となった世代です。
いわゆる管理職としてのポストは人数分用意されておらず、部下のいない専門職的な処遇に甘んじている人が多い世代なのです。
2.45歳からのキャリアパスにかかわる障害
45歳を過ぎると、自分の会社での将来的な位置づけが見えてきたりします。得体の知れない不安感を感じる年齢階層です。どのように自分のキャリアを計画するか、真剣に悩む人が多くなります。
会社で用意されたキャリアパスを受け入れることが、当たり前であったので、やむを得ないわけです。
しかし、自分のキャリアをどう描けば良いかわからないことは、キャリアチェンジには大きな障害となります。
45歳を過ぎた転職市場が活況をおびてきているからこそ、その障害への対応が必要となります。
3.3つのチェックポイント
45歳を過ぎて転職を考えるとき、つぎの3つのポイントをチェックしましょう。
まず、自分のキャリアを自分で考えたことがあるか。
サラリーマンは、自分のキャリアを会社任せにせざるを得ない部分があります。しかし、あえて自分で将来を考えたことがなければ、少なくとも5年後にどうなっていたいかを考えてみることが大切です。
つぎに、自分の持っているスキルや資格が汎用性のあるものであるか。
たとえば、「調整力」をスキルに挙げる人がいます。確かに対人折衝などでの調整力を発揮して活躍していたのでしょう。しかし、それが転職後に通用するかは全く未知数です。
自分以外の第三者の助言を得るなど、社外でも通用するスキルや資格を持っているかを判断しなければいけません。丁寧に振り返ることが大切です。
最後に、まったくゼロからのスタートを受け入れる覚悟があるか。
転職すると、その会社のカンバンがあっての自分を痛感します。いままで勤務していた会社と同様の存在感は、当然失います。
頭でわかっていても、心が受け入れない。この現実を受け入れるだけの器の大きさが必要です。
「転職だから、それは当然。新天地でやりきろう!」と決意していても、相当の覚悟が試されます。
したがって、ゼロからスタートする心の準備を整えておくことが大切です。
4.まとめ ~ 転職を始めるスタートライン ~
「35歳転職限界説」が変わりつつあるようです。
45歳を過ぎてからでも、自分のキャリアを主体的に考え、自分の人生を自己選択で切り拓ける可能性が高まっていることは歓迎すべきことです。
ただ、残りのサラリーマンとして時間は限られています。
私が43歳で転職したとき、「ゼロからのスタートを受け入れる覚悟」が全く足りていませんでした。
過去のポジションや発言権、それに伴うプライドを捨て去ることがなかなかできなかったのです。
ただ単に「転職」することを目的化してしまったことが要因でした。
頭で考え理解したものの、自分の心は納得していなかったのです。
45歳を過ぎて転職を考えるとき、今回お伝えした3つのチェックポイントは、転職を始めるスタートラインです。
しっかり、自分で準備してくださいね。
そして、確実にチャンスを手にするためにも、最後のチェックポイント「ゼロからのスタートを受け入れる覚悟」については、しっかり取り組んでください。
「転職によって得られること」と「転職によって失うこと」をそれぞれ最低10個紙に書き出してみることをお勧めします。
自分の内心を、可視化することで心の準備が整いますから。