1時間という時間は、人によって長さが変わりません。しかし、時間の感じ方は、人それぞれ異なります。
誰にも時間は等しく流れるし、誰もが時間の経過とともに年齢を重ねていきます。
抗うことができない現実があるため、45歳を過ぎると、ミドルクライシスを感じる人が多くなります。
かつての私がそうでした。
自分の心のなかにある漠然とした不安を感じながら、自分の社会人としてのキャリアの築き方がどうあるべきかに迷っていたことがあるからです。
時間を無駄にできない。しかし、自分が変わることがないまま時間が過ぎていく。
焦る気持ちが、なにか行動しなければ先が変わらないという思いを強くします。
そんなとき、今の状況をなんとか打破しようとして、会社を変わりたい、転職したいという思いが強くなったりするものです。
今の会社は自分には合っていない。
他の会社に移れば自分に良いことが起こるような気がする。
行動を起こさなければ、このまま変わらない毎日が続いてしまう。
こういう思いを持ち続けるとき、自分の考え方がまとまらなくなり、どんどん深みにはまってしまうことが往々にしてあります。
抜け出し方がわからないと、立ち往生してしまいます。
どうすれば、この健全でない状況から抜け出せるか。
今日はそのためのヒントをお伝えしたいと思います。
安易な転職は禁物
先に書いたように、ミドルクライシスを感じたときに、安易に転職という手段に頼ることは禁物である、と私は考えます。
自分の環境を変えたい、自分がよくなりたい、という「自分目線」の価値判断が強くなり過ぎ、他者とかかわる目線が弱くなるからです。
漠然と自分の経験やスキルが活かせるのではないか
自分が必要とされる場所があるのではないか
このように「自分目線」が強くなると、その先にある他者の存在を忘れがちになります。
言うまでもなく、人は他者とのかかわりの中で生きています。
他者の存在を忘れてしまうと、冷静に自分の存在価値を把握できなくなります。
それゆえ、安易な転職は禁物なのです。
ピンチだからこそ、他者を思う
ミドルクライシスは、キャリアにおけるピンチだと、私は思います。ピンチのときに焦ると、冷静な判断ができません。
冷静になるには何が必要か。
キャリアにおけるピンチのとき、私は、「自分と他者とのかかわり」を再確認することが必要と考えます。
「自分と他者とのかかわり」とは、
自分がどのような他者の役に立っているのか
自分の存在や行動の先にある他者とはどのような存在か
という視点をもつということです。
この視点は、自分が積み上げてきたキャリアを冷静に振り返るきっかけになります。
そして、振り返りを通して、自分がチカラを出し切っていたときのことが思い出され、自信があったときの自分を取り戻すことができます。
人は社会で生きるとき、他者とかかわらざるを得ません。ゆえに、その他者とのかかわりのなかで、自分の存在価値を確かめることで、冷静になることができるのです。
自分はなにができるのか
他者とのかかわりにおける自分の存在価値を確かめた後は、今の自分ができることに視点をおくことが大切です。
冒頭に安易な転職は禁物とお伝えしました。
ミドルクライシスを感じるとき、私が強くおススメしたいことは、「転職を考えるならば、今の会社でできることは何かを考え、行動してみる」ということです。
ミドルクライシスはキャリアにおける立ち往生状態と言えます。
「転職」というテコを使えば動き始められるように感じてしまいますが、私は解決策にはつながらないと考えます。
立ち往生している状態、つまり、思考停止状態で下した判断は、考え落ちが往々にしてあるからです。
45歳を過ぎたキャリアを考える時、考え落ちによる後悔は絶対に避けなければいけません。
そのためには、「今の会社でできることは何か」を考えることは、自分の現在地における存在価値を自分の言葉で捉え直すというプロセスが極めて大切になるのです。
まとめ
45歳を過ぎたキャリアにおいて、「自分と他者とのかかわり」という視点をもつことは、自分のチカラを冷静に捉え直すことにつながります。
ミドルクライシスを感じたならば、「自分と他者とのかかわり」を通して、自分が一番輝いていたときのことを想起してみてはいかがでしょうか。
自信のあったときの自分を取り戻すことができれば、自分の底力を再認識することができます。
キャリアのピンチを切り抜けるチカラがつくのです。
仮に転職という手段を選択したとしても、このプロセスは自分にとって役にたつものになるはずです。