先日、新宿で開催された朝活に参加しました。
私は、その朝活を2週間に一度、自分の行動を振り返るモニタリングポイントとして活用していますが、もう一つの魅力的な活用ポイントがあります。
それは、参加者の方々と対話する機会があることです。
異業種の方とお話することで、普段の自分の思考パターンとは異なる考え方に触れられます。それは、自分では気がつかなかったモノの捉え方につがなることがあり、視野が広がる感覚が刺激となるという魅力があるのです。
先日、その朝活で、美容業界の激戦区といわれる東京・青山で、美容室を経営されているイトヤマさん(仮名)とお会いする機会をいただきました。
イトヤマさんは、一人で美容院を経営されています。お客様と一対一で対応される完全パーソナルなサロンを経営されているカリスマ美容師の方なのです。
明るく、エレガントな雰囲気をお持ちの方で、カリスマ美容師のオーラを感じる方です。
そのような方なので、
「イトヤマさんって、どういうキャリアをたどられたんですか?」
「きっと、いろいろと考えて、今のポジションを確立されたんですよね?」
とついついお伺いしてしまいました。
イトヤマさんの答えは、意外なものでした。
「私、美容師になりたくてなったんじゃないんですよ。」
「大学に行きたくないって思い、美容師の道に入ったんですよ。」
「それで、今の私は、なんとなく流れできちゃったんですよね。」
本当に「流れ」だけなのか
「流れと言っても、今は独立されてサロンを経営されていますよね?独立されるには、それなりの覚悟が必要だったと思うんです。どういう風に覚悟を決めたんですか?」
イトヤマさんは答えてくれました。
「最初は、美容室に社員として働いていたんです。でも、年数を重ねると管理職的な立場に立つ機会が増えてきて、お客さまとの接点が少なくなるように感じたんです。」
「その後、フリーランスとして働くようになりました。働いていて下の人からは慕われたのでとても心地よかったのですが、経営者との関係では難しさを感じることがあったんですね。」
「その後、美容院をいくつか渡りあるいて、あるとき、フランスに行くことを決意し、貯金したお金で海外に羽ばたきました。」
「海外で学び、日本に帰国して、独立することにしたんです。」
「独立するときは、資金調達も自分が抱えきれる範囲でやりくりするようにしました。」
「帰国してから、常連だったお客さんが徐々に戻ってきてくれて、今がある感じなんですよ。」
「だから、なんとなく流れできちゃったんですよね。」
独立する覚悟の決め方
私はイトヤマさんに問いかけました。
「なるほど、とても興味深いです。そこで、改めて伺いたいのですが、独立される覚悟につながるきっかけは思い出せますか?」
イトヤマさんは答えてくれました。
「そういえば、フリーランスで働いていたとき、先輩格の方から『イトヤマ、いつか独立するんだろ?』って聞かれたことがありました。そのとき、「自分もいつか独立するんだな。」って感じたことを思い出しました。」
「たしかに、振り返ると、この言葉がきっかけになったのかも。」
イトヤマさんにみる計画的偶発性理論
ここまでお話して、私から、計画的偶発性理論のことをお話しました。と言うのは、イトヤマさんの今があるのは、まさに計画的偶発性理論が当てはまると感じたからです。
計画的偶発性理論は、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心(リスクテイク)の5つの視点から成り立ちます。それぞれの視点でキャリアを捉えてみたくなったからです。
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好奇心:自分のチカラで生きていきたいという思いをもって、大学進学ではなく美容専門学校に進むという決断を高校生のときにした。お客さまに接することが好きである。
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持続性:その思いで美容師という職業を続けてきた。社員、フリーランス、フランス留学、独立というステップを刻みながら、キャリアを続けてきた。
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柔軟性:先輩の一言を心にとめ、それを自分のキャリアの行く末の指針とした(無意識で)
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楽観性:美容師としての実力もついたから、なんとかできると感じ、自分が抱えきれる範囲で独立しようと考えた。
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冒険心:思い切って、独立する道を選択した。
イトヤマさんは謙遜されて「なんとなく流れで」と仰ったんだと感じました。というのは、5つの視点で捉えると、きちんと考えていることが浮き彫りになるからです。
そして、イトヤマさんが歩んだ独立にいたるまでのステップで、共通していることもわかりました。
それは、お客様目線を徹底していた、お客様のことを考えることに懸命になっていらっしゃったということです。
このことをイトヤマさんにお伝えしました。
イトヤマさんはこう答えてくれました。
「あ~、たしかに、そういう視点でみるとあたっていますね!」
「おもしろい!」
まとめ
自分のチカラを信じて仕事をしている人に、その方のキャリアの軌跡を尋ねると、実はイトヤマさんが私に答えてくれた「なんとなく流れで」というニュアンスの答えが返ってくることが往々にしてあります。
それゆえに、私はイトヤマさんにご自身のキャリアを聞いてみたくなったんです。
そして、「なんとなく流れで」という背景に、無意識ではあるものの、計画的偶発性理論が存在しているということを実感しました。
そして、自分のキャリアを振り返るとき、自分のなかに存在する計画的偶発性理論に基づく出来事を確かめてみると、「おもしろい!」という感覚を覚えることがあると感じました。
それは、「知っているようで、知らない自分を認識し、自分のキャリアの軌跡を自分で承認できる。」からではないかと思うのです。
一人ひとりのキャリアの軌跡には、「今につながる意味」と「将来につなげる意味」があると、私は考えます。
計画的偶発性理論に基づいて、自分の過去を捉えることは、自分のキャリアの傾向を再確認し、今に活かし、将来の希望につなげることです。
イトヤマさんとの対話を通して、あらためてそう感じました。
そして、計画的偶発性理論と自分の過去を掛け合わせてみることは、それなりの時間を必要とするものの、人生という長いライフスパンで見ると、価値のある時間になるのだな、ということを再認識しました。
本日も、お読みいただきありがとうございました。