2000年当初、主に大手企業で成果主義型人事制度の導入が進みました。市場の不確実性が高まり競争力を高めるため、「結果重視」へ軸足が移りました。
当時、私は人事制度の立案に携わっていましたので、人事政策の転換期を目の当たりにしました。
変化に対応できた人材とそうでない人材がはっきりしました。そして、後者の人材が組織における存在価値を急速に失っていく様を目の当たりにしました。
中高年の社員にとっては、価値観の転換を迫られ早期退職勧告を受けている人もいて、なにもできない自分がもどかしかったことを記憶しています。
2000年当初と比較すると成果主義型人事制度は変遷を重ね、「プロセス重視」と「結果重視」をハイブリッド型で備えるものになりつつあると感じていますが、今後の労働法制の動向も踏まえ進化を続けていくでしょう。
ところで、40歳代の転職市場が動きつつあるものの45歳を超える転職市場は厳しいと言われています。
この世代でキャリア転換するには、得るものと失うものを比較し、自分の生き方、価値観に沿う意思決定が必要となります。
失敗は、避けなければいけません。
【目次】
なぜ転職なのか (表の理由と裏の理由をはっきりさせる)
「転職したい」と考えるきっかけは、人それぞれです。
私は、「人事のキャリアを活かしたい」ということが最初の志望動機と思っていました。
自分のプライドを保つための表の理由だと、今は自己認識できているので、あえて、「思っていました」なのです。
それとは逆に裏の理由もありました。「上司とのコミュニケーション」です。
転職を検討した頃の上司とは正直信頼関係を保てないと感じたことが、転職を検討することのトリガーになったのです。
私が転職当時、「自分の転職は失敗したんだ。」と後悔したのは、裏の理由にきちんと向き合わなかったことへの忸怩たる思いがあったからと考えています。
表の理由は、自分のプライドを保つためとは言え、しっかりと持ち合わせていたので、何とか踏ん張ることができましたが、それがなかったら、きっと早期に退職していたと思います。
年功序列意識との決別
日本の企業は、人事制度においてキャリアと報酬を長期的に捉えて設計されています。おそらく、45歳を過ぎてから転職しようと考えている方々の多くは「年功序列型人事制度」のもとでキャリアを積み上げきたことと思います。
「年功序列型人事制度」を大雑把に整理すると、つぎのような特徴があります。
①20歳台は、仕事を習熟するために貢献度に対して報酬は高い
②30歳~40歳前半は、社内での経験・スキルを積み上げ企業業績に貢献する時期であるものの、貢献に対する報酬は低い
③45歳以降は、今まで培ってきたビジネススキルを存分に発揮し、企業に貢献することが求められるものの、②と比較すると貢献度の程度が緩やかになると想定されるため貢献度に対する報酬が高い
私は、転職するということは、②で示したような貢献が求められます。自分の働き方を、30歳代の頃に戻すくらいの覚悟が必要と考えます。
従来の自分の意識と決別です。
自分の人的資本とは?
自分が保有している人的資本を活用して、業績に貢献する意識が自分は持っているか否かを確かめることが必要になります。
「経験、知識、スキルを活用して、どのような貢献を生み出せるか」を確かめるわけです。
人的資本の整理は、人材要件を確かめる公式を活用することをおすすめしています。
4つの「力」を構成する要素を確かめることで、「自分の人材力から生み出される貢献」を可視化できます。
【人材力】=(【基礎力】+【専門力】+【再現力】)×【人間力】
45歳を過ぎた転職で求められる意識
年齢を問わず求められる意識ですが、「高付加価値を創出する」につきます。
年功序列型人事制度で社会人経験を積み上げていると、「指示待ち意識」があったりします。
転職後に仕事を割り振られたとき、「マニュアルはありますか?」と聞いてしまうような人は注意が必要です。
心のどこかで、「誰かに、あるいは、何かに頼りたい」という気持ちが残っている表れでもあるからです。
決められたやり方で、決められた作業をたんたんとこなすだけでは、報酬に見合った高い付加価値の仕事とはいえません。
45歳を過ぎた転職者が、このようなマインドが高い付加価値を出すという意識がないならば、転職した後に厳しい場面に直面することになります。
「転職しない」ことをおすすめします。
まとめ
転職を成功させるたった一つの方法は、「経営者マインド」を持ち合わせることです。
経営者ではなくとも、リアルな経営者感覚を体感することはできます。
「自分の仕事は、その完成度合により評価されるべきものである。」という意識を持つことです。
私は、この意識が「経営者マインド」に近しい意識を持てるはずです。
そのための秘訣は、「段取り力」にあると考えます。
時間、タスク、成果、人脈。
自分のキャリア。
いずれも、「将来どうなりたい」という思いから逆算して段取りすることで、理想に近づきやすくなります。
人は、確かめられないこと、見えないことに対して不安を覚えますが、「段取り力」があれば、不安を最小化できます。
45歳を過ぎた転職で失敗しないためには、たった1つ「段取り力」を身につけることが必要です。
自分の活躍している姿、イキイキしている姿、家族を幸せにしている姿などから逆算すれば、自分が取るべき行動が何であるか、わかります。
転職を失敗しないために、段取り力が必要なのです。