「やりたいことがわからない。」
「自分の強みがわからない。」
キャリアに関する相談を受けるとき、「自分がやりたいことがわからない」ことがテーマになることがよくあります。
このような場合、自分が好きなことや、人から認められたこと、時間を忘れるくらい没頭したこと等について聞きます。それらを紐解いていくと、「自分がやりたいこと」の原点にたどりつくからです。
やりたいことを実現するためには、人それぞれが持つ才能を自ら発見することが不可欠だと考えます。そして、才能は先天的な要素もある一方、後天的に獲得できるものとも考えます。
たとえば、最初は好きでもなかった仕事が経験を重ねることで好きになり、自分の才能になることがあったりします。また、才能は、他人から見ると才能と感じられることを自分ではそう感じていなかったりします。
才能=タレント。人材開発の領域でも、”タレントマネジメント”というテーマで注目されてきています。
2017年9月10日に初版発行された『【才能】が見つからないまま大人になってしまった君へ(著者:神岡真司、ワニブックス社)』を購読しました。自分の才能を見出すためのメッセージが58個挙げられていて、自分の才能を振り返るきっかけをつかむ上で、とても参考になります。
神岡真司『才能が見つからないまま大人になってしまった君へ』|ワニブックスオフィシャルサイト
今回は、その58個のメッセージの中で、私が共感したことを3つお伝えします。
【目次】
「偶発性のチャンス」を呼び寄せよう
「計画的偶発性理論」は、キャリアを構築する上でとても参考になる理論だと考えています。この本では、このことを端的に紹介しています。計画的偶発性を偶発性のチャンスと表現されている点が秀逸だと感じました。
人は、人生のいくつかの場面で、「才能の目利き」に出会います。
「きみ、これを本気でやってみる気はないか?」などと言われる場面のことです。
自分の思いもよらない才能を見抜かれた瞬間といってもよいでしょう。
あなたにも、過去にそうした瞬間が、何度も訪れていたのではありませんか。(P46から引用)
このほかにも、「偶発性のチャンス」が呼び込んだ世紀の大発見にも触れています。
例えば、電子レンジの発明や、ステンレスの製品化、ダイナマイトの発明等は、この「偶発性のチャンス」がきっかけになったものだと紹介されています。
「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つの条件が「計画的偶発性理論」を構成しているものですが、才能の発見につながる理論であることが示されている点に共感しました。
どんな場合であっても、「コレ、面白いかもね」といったノリのよさが大事なのです。(P49から引用)
この意識があれば、まずは行動してみるという意識につながります。行動することで自分の貢献が高い成果として認められることで自分の存在価値も高まります。
私は、「計画的偶発性理論」を大事にしていることもあり、特に共感したのだと思います。
「どん底に落ちたときに気づくもの」から才能を見つける
失意の底にいるとき、そこから動きだすには「失意」を振り切り、新たな方向性を見出すチカラが必要になります。しかし、実際はそんなことに意識を向けることは簡単ではありません。私も転職した直後に「失敗した」と感じ、失意の底に居たときは、何をすればいいのか、どうすれば回復できるのか、まったく見当がつかず悩みました。
そんなとき、私のコーチから「今の職場は、見方を変えれば天国ですよ。自分のチカラが及ばない場所で、チカラを発揮することが、あなたの実績になるからです。」というフィードバックをもらい勇気づけられました。
この経験があったから、このヒントに共感したのだと思います。
人に騙されて失意のどん底に沈んだり、うまくいくはずと思って大胆に挑戦したことが失敗に終わると、誰でも絶望感にさらされます。突然の病魔に襲われた場合も同じです。
もし、あなたが今、そんな絶望の淵に追いやられているなら、新しい人生を生きるための才能を発見するチャンスが訪れている時でしょう
セレンディピティとは、偶然に出会うもの、探していたものとは別の価値に気づくことを意味します。絶望や失意の時に、この偶然の発見、才能のひらめきに気づくのは、これまで経験したことがないほどに、心や魂が激しく揺さぶられた結果です。(P80から引用)
失意のときに気づいたこと、そして、失意の底から抜け出すとき発揮したチカラは自分の才能にほかならないと考えます。「失敗から学ぶ」ことの意味は、文字では理解できるものの、実際に体験すると理解していたことを思い出せなくなります。
もっとも、どん底にいるときに気づくものが才能であるというメッセージはとても共感できました。
自分の「意外な才能」に気付こう
著者は、食わず嫌いだったことに才能が潜んでいると書いています。
たとえば、新卒で経理部に配属され、苦手な作業に苦しむうちに、ある日突然、簿記や会計の仕組みに興味を覚え、夜間学校に通い、税理士になって大活躍している人もいます。(P38から引用)
これは、「計画的偶発性理論」と重なるところがあるので、共感しました。食わず嫌いだったけれども、やってみたら面白くなったという経験は誰しもあるものではないでしょうか。
わたしも、社会人になったときに、自分の専門領域が人事になるとは、まったく思っていませんでした。むしろ、最初は嫌で嫌でたまらなかったです。なぜならば、自分は苦手だと思っていた数字を扱う「給与計算」を最初に担当したからです。
しかし、やってみると経理のこともわかってきたり、経営的な視点として必須の人件費の捉え方を覚えたり、人事に関する法的対応を学んだりして、面白くなったことがあります。結果的にそのときから21年人事の領域に携わっているのですから、不思議なものです。
こういう経験があったからこそ、共感したのだと思います。
もっとも、著者は、どうしても適用できない場合は、他の才能を見出すことにつなげるためにも、ある段階で見切りをつけることも必要と書いています。
見極めは難しいです。やってみて気づいたことから、新しい方向性を見出すこともできますが、大切なことは、ダラダラとやるのではなく全力を尽くしてやってみることではないかと考えます。中途半端にやることは、後で「あのとき、〇〇していればよかった・・・。」という後悔につながり、メンタルにプラスの影響を与えないからです。
まとめ
この本は、40代になって、自分のキャリアに悩んでいる人には、是非読んでもらいたいと感じました。
本のカバーに、つぎのように記されています。
とりあえず、これ1冊を読み終えることも才能です。
私は、このメッセージを、「行動するチカラが残っていれば、才能を見出すことは必ずできる。」という意味として捉えました。
「自分の居場所」「自分の活かし場」を再発見するためにも、この本に書かれている58のメッセージはとても参考になります。
40代は、社会人としての経験や積み上げてきたスキルがたくさんあるはずです。
それに自分の「すきなこと」「やりたいこと」を掛け合わせることで、なにが実現できるか。
こんなことをイメージしながら、キャリアを長いスパンでとらえて再構築していければ、組織の中での存在価値は必ず高くなると考えます。
この本にも書かれている「計画的偶発性理論」。キャリアに迷いが生じたときは、この理論を今までの自分のキャリアに当てはめて振り返ってみることをおすすめします。
「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心」
いままで取り組んだ仕事の一つひとつを振り返るときに、5つの条件がどのように表れていたかを確かめてみるといいでしょう。
うまくいった仕事は、5つの条件が揃っていたのではないでしょうか。逆にうまくいかなかった仕事は、5つの条件のうち、何かが足りていなかったのではないでしょうか。
本を一読して、あらためて自分の才能が開花するときは、偶然の出来事を大切にすることが重要だと感じました。
とにかく、オススメの一冊です!