「いつかやらなければならないことだけど、目を向けたくないから準備しないんですよね。」
「報告しなければならないとわかっているんですけど、方向性が変わってしまうのはいやなんですよ。」
「報告できる段階になったら、報告しようと思っているんですけどね。」
「やらなければならないこと」はわかっているものの、その現実を直視できず、先送りしてしまうことはよくあることです。
先送りすることは、「未完了」の案件を積み上げることにほかなりません。
結果として、ほんとうにやらなければならない仕事に着手できず、心理的プレッシャーに悩んでしまう人がいます。
「すぐやる」ことができれば苦労しないわけですが、なかなかできない。
今回は、「やらなければいけないこと」を先送りしないための考え方をお伝えします。
【目次】
「先送り」する状態とは?
先日、やらなければいけないことを「先送り」していることで悩まれているTさんという経営者の方とお話する機会がありました。
Tさんは、ビジネスオーナーに対する新規事業の進捗状況報告が6ヶ月近くできていない状況にあり、さすがに「そろそろ」報告に行かなければいけないと感じていらっしゃいました。
ビジネスオーナーに報告することで、心配ごとがあるとのこと。
それは、Tさんが本当にやりたいと思っている事業を進めることができなくなってしまうという思いでした。
ビジネスオーナーは、新規事業の成長に加えて事業採算性を重視する。
Tさんは、自分のビジネス構想は広がるものの、事業採算性に見通しが立っていないことも報告できない要因になっていました。
それゆえ、Tさんが得意な仕事に関する活動に注力してしまい、打開策に悩まれていました。
さて、このような状態はTさんにどのような影響をもたらすでしょうか?
こたえは、居心地が良い状態です。
得意な仕事に注力している間は充実感を味わえます。また、苦手な仕事をその間だけ忘れることができます。
このサイクルが、Tさんにとっての居心地の良さをつくりだし、「先送り」する行動を生み出しているのです。
「先送り」する意味を因数分解する
私はTさんに伺いました。
「そもそも、どうして、先送りしてしまうんでしょうか?」
Tさんのこたえは、
「結局、自分を否定されたくないんだと思います。」
でした。
真剣に新規事業に取り組んでいるがゆえに、「先送り」することで、自分の存在価値を否定されたくないという思い。
それが、Tさんの気持ちの根底にあることがわかりました。
このようなとき、「先送り」することが自分に与える影響を因数分解して観察することが有効です。
具体的には、「先送り」することで、「失うもの「得るもの」を列挙してみるのです。
Tさんに伺いました。
まず、「失うこと」。
自信
やる気
モチベーション
事業を続けることの意味
「失うこと」は文字通り喪失感につながります。
Tさんの気持ちの根底にある「否定されたくない」という思いと直結していることがわかりました。
つぎに、「得るもの」。
Tさんは「得るもの」をイメージしづらそうでした。
しばらく考え、つぎのような「得るもの」を挙げてくださいました。
ビジネスオーナーの意向
ビジネスオーナーの意図
リアルな帝王学を学べる
本から学ぶことと違う学び
自分の思いを伝えることができる
結果的に、イメージしづらかった「得るもの」を掘り下げることで、今まで気づくことがなかったプラスの意味づけにつながりました。
プラスの意味づけができたことで、「先送り」に直結していた「自分を否定される」という思いこみが、「自分の成長につながる」という思いこみに変化したからです。
因数分解するとわかること
「先送り」せず、「すぐやる」ことを習慣化できれば、仕事もはかどります。
しかし、「すぐやる」ことが自分にネガティブな影響をもたらすという思いこみがあると「先送り」してしまうことはよくあることです。
因数分解することで、ネガティブの裏側にあるポジティブな要素を引き出す。
ここに目を向けることが重要です。
まとめ
「先送り」することで失うものはなんですか?得るものは何ですか?
このシンプルな問いから、Tさんはビジネスオーナーへの報告が自分にプラスの影響をもたらすことに気づきました。
「先送り」していることを完了させる意欲を、ポジティブな意識でとらえることが大切になります。
「先送り」してしまう自分の感情を因数分解してみると、解決策にたどりつけます。
ぜひ、試してみることをおすすめします。
きっと、積み残し仕事がなくなり、パフォーマンスが上がります。
それは、自分の存在価値を上げることにもつながりますから。