「いくら仕事をこなしても、終わらないよ~。」
「あいつに任せても、どうせできないだろうからな。」
「最初から自分でやった方が手っ取り早いし。」
ある特定の分野でベテランの域に達して、皆から一目を置かれる存在になる人がいます。仕事を粛々とこなし、職人のごとく成果を出し、職場の生き字引として活躍している人です。
ときには、新任の上役の指南役をしたり、新人の指導役を担ったり、とにかくその分野のことは何でも知っている貴重な存在です。
私も20代のころは、ベテランの先輩社員からたくさんの教えをいただき、社会人としての基礎をつくっていただきました。
際立って目立つ存在ではないものの、ベテランの人がいると、会社の仕事が円滑に進められます。
一方、ベテランの人と違って、仕事の始まりから終わりまでを自分独りで仕事を抱えてしまう人がいます。
部署の事情で要員が配置されないことから、やむを得ず独りで仕事を抱えてしまうケースはありますが、とにかく独りで仕事を進めないと気がすまないタイプの人です。
45歳を過ぎると、年齢的にも中堅からベテランに近づきます。
自分独りで仕事を抱えてしまうことで、自分の城を守りたくなる時期でもあります。(自分にしかできない仕事であれば、仕事がなくならない、と思うからでしょう。)
しかし、そういう仕事のスタイルは、決して評価されるものではありません。
こういう人も一見すると職人風ですが、ベテランのそれとは違います。どのような違いがあるのでしょうか。
【目次】
1.仕事プロセスをブラックボックス化する
自分独りで仕事を抱えてしまう人は、仕事をブラックボックス化する名人です。仕事を任されてから完成するまでのプロセスを「見せない」からです。
以前、ブラックボックス化する名人と仕事スタイルのことで話をしたことがあります。その人から出てきた言葉は、「責任感」でした。
慣れていない人に仕事を任せ、ミスが多発する
ミスが多発すると、納期が遅れる
納期が遅れると、信用を失う
彼から出た言葉は、うなずける部分もありましたが、独りよがりの論理に聞こえました。
そもそも、自分の持っている知識・スキル・経験を他の人に伝承すれば、「慣れていない人」を減らすことができると考えたからです。
組織内に伝承することをせず、自分の「責任感」を貫こうとする姿勢は、本当に組織のためにならない点で、「歪んだ責任感」に近いのではないでしょうか。
ベテランの人は、仕事のプロセスを見せることで、組織のなかに自分以外の担い手を創ろうとします。この点が第一の違いです。
2.仕事プロセスを言語化できない
「歪んだ責任感」とは少し言い過ぎかもしれませんが、仕事プロセスを言語化して、他の人に伝えられないことが、「仕事プロセスのブラックボックス化」につながっています。
長年積み重ねた知識・スキル・経験を言語化することは簡単なことではありません。未経験者に伝えるとなるとなおさらです。しかし、それができなければ、組織力は高まりません。
ベテランの人は、文字として残さなくとも、的確に言語化することができます。伝承する術を持っている。この点が第二の違いです。
3.仕事プロセスを構造化できない
「仕事プロセスの言語化」は、「仕事プロセスの構造化」することができないことが要因です。頭の中に存在する「仕事プロセス」を構造的に分解することができない、仕事の要点を的確に捉えられない、ということです。
仕事の流れは理解しているが、目的(なんのために)を理解していないとも言えます。
ベテランの人は、仕事の目的を理解しています。目的を理解し、仕事のポイントを的確に示すことができる。この点が第三の違いです。
4.まとめ
自分独りで仕事を抱えてしてしまう人は、「歪んだ責任感」「仕事プロセスの言語化能力不足」「仕事プロセスの構造化力不足」の3点から評価されません。
これらは、全体最適の意識と論理的思考が不足とも言えます。
45歳を過ぎると、仕事を独りで抱えてしまいがちです。
そうなりそうなときは、自分の中で組織のことを全体最適の視点で見ていないこと、論理的に物事を捉えられていないことが影響しているかもしれません。
今一度自分の立ち振舞いを見直して、自分の評価=自分の存在価値を下げないことが重要です。