「今回の人事はよい人事でしたね。」
「あの人、こんな部署に行くことになったね。」
定期人事異動が終了した後に、会社内で交わされる会話の多くは、他人の人事異動についての感想です。
毎年4月1日は、多くの会社が定期人事異動を行います。
サラリーマンにとって、人事異動は避けて通れないことです。
したがって、自分の人事異動の受けとめ方がとても大切になります。とくに、不本意な人事異動であった場合の受けとめ方は、その後のキャリアに大きな影響を与えます。
そこで、自分の異動が不本意な人事異動だと感じたときの対処法を考えてみたいと思います。
【目次】
1.なぜ人事異動が必要であるかを理解する
人事異動は、コストがかかります。たとえば、新しい名刺を作ったり、新しいデスクを用意したり、はたまた、転居をともなう異動であれば引っ越しにかかわる費用が生じます。
したがって、意味のない人事異動はありません。なんらかの意味が必ずあります。
人事異動の目的は何でしょうか。人事異動は、大きく3つの目的があります。
【目的1】人材育成
【目的2】事業成長
【目的3】人材の活性化
目的1の人材育成は、その人の将来のキャリアを考えたものです。たとえば、将来の幹部候補・中間管理職の育成や、複数の部署を経験することを通した適性の拡大がその例です。
目的2の事業成長は、会社の事業成長を考えたものです。たとえば、業績をより拡大する必要がある場合、あるいは、業績を回復する必要がある場合に、その事業をリードするために必要な人材の配置がその例です
目的3の人材の活性化は、長年同じ仕事に携わることによる業務のブラックボックス化や停滞感を回避するためのものです。たとえば、仕事の属人化を回避して不正防止を図ったり、マンネリ感や人間関係によるモチベーション低下の回避、がその例です。
それぞれの目的が重なり合っていることが当然あります。目的1と目的2を同時に図るための人事異動は、よく行われます。
2.自分の異動の目的は何であるかを、自分なりに理解する
不本意な人事異動をポジティブに受けとめよう!と言うつもりはありません。
大切なことは、自分の異動の目的は、人材育成、事業成長、人材の活性化のいずれに該当するか、を考えてみることです。
さらに、それを自分が、どう捉えるかです。上司や人事から聞いた目的を、いったんは額面通り受けとめた上で、その裏側にある目的を推察するのです。
なにごとにも、表と裏があります。
たとえば、仕事を幅広く覚えてもらいたい、という表向きの理由。その裏には、なんらかの問題によるモチベーション低下を回避すること、または、人事異動で異動後の組織活性化を図る、ということ裏の事情があったりします。
裏の理由は明らかにされないことが一般的です。
したがって、裏側にある目的を推察するプロセスで感じたギャップを、受けとめることが重要です。
なぜならば、そこに「不本意な人事異動」と感じる原因があるからです。
3.自分でできることを考える
ギャップを把握できれば、「不本意な人事異動」を納得できる糸口にたどり着いたと言えます。
そのギャップを、どのように扱うか、自分で決める材料が明らかになったからです。
私は、人事に携わる立場から、自分の経験や知識を活かす機会を見つけることを勧めています。今までのキャリアを自分で認めた上で仕事に取り組むことができるからです。
一方、自分の経験や知識を活かす機会がない場合はどうするか。
この場合、真摯に不足している経験や知識を学ぶ機会と捉えるよう勧めています。ときに年下の人から教わることがあり、プライドを保つことに四苦八苦することもあります。
そうだとしても、愚直に学ぼうとする意識と意欲が必要なのです。
4.まとめ ~ヤケを起こさないこと~
私も、不本意な人事異動を経験したことがあります。自分が大切にされていないと感じてました。
そのとき、自分の経験を広げ、可能性も広がると言い聞かせましたが、なかなか上手くいきませんでした。
私が、その不本意だと感じた人事異動に納得がいくようになったきっかけは、その裏にある目的を推測したことです。
その結果、組織マネジメント力において、自分に足りていないことがあることに気づきました。この気づきを受けとめることは辛かったです。
しかし、同時に自分のキャリアを切り拓くのは、自分しかいないことにも気づき、マネジメントで不足していることを自分の上司からフィードバックしてもらい、行動を変えました。
どのような仕事でも、上手くいかないことがあると思います。その上手くいかない原因を知ることは辛いことです。しかし、辛い現実を直視して、前に進もうとすれば、道は開けていくのではないでしょうか。
不本意な人事異動であっても、決してヤケを起こさないことが大切だと感じています。
見ている人は見ています。不本意な人事異動であったとしても、愚直に前を向いて行動している人は、「存在感のある人材」としての道が必ず開けてきます。