「社長らしく振舞わなければならないことに戸惑ってしまうんだ。」
社内ベンチャーで起業したKさんから、お話を伺いました。
Kさんとは中小機構が主催するTIP’Sで知り合いました。「生産者の方を元気にしたい」という思いをもって、生産者と都会に住んでいる人をマッチングさせるビジネスを立ち上げた方です。
サラリーマンでいることと起業することを比較したときに、どのような違いがあるかを率直に知りたいという思いがありました。
お話を伺い、サラリーマンとして働くうえで、「存在感のある人材」になるヒントをいただきましたので、紹介します。
【目次】
1.お利口さんなサラリーマン
サラリーマンは、「決められたことを、意図を汲んで形にすること」が求められる場面が多々あります。
「意図を汲んで形にすること」にも、主体性が求められます。しかし、「自分で決めずに、自分の一段階上に決めてもらう」という姿勢になりがちです。
このことをKさんは、「サラリーマンのベテラン」と表現されていました。
起業すると、すべて自分で決めていくことになります、他方、サラリーマンは、自分のやりたいことはさておき、組織のバランスを勘案して、人間関係の中でバランスを見て仕事を組み立ててしまう、という意味です。
「当時はお利口さんなサラリーマンだったと思います。」
Kさんは、「上司に反抗することなく、自分のやりたいことでなくとも受け入れ、仕事を形にすることが求められていた」と回想されました。
「やりたいことが特段なかった」ので、「お利口さんなサラリーマン」に違和感は感じなかったようです。
起業後は、「沸々とわきあがる自分の思い」の心地良さとそれを実現する痛苦しさを経験され、行動が変わったと伺いました。
サラリーマンでいるときと全く異なるスキルが求められることに気づかれたことが、行動と意識が変わるきっかけになったとのことです。
2.サラリーマンの悩みといかにつきあうか
多くのサラリーマンが「人との比較」に悩みを抱えることと思います。
「同期との昇進」
「評価やボーナス査定」
「優秀な後輩に先を越される不安」
Kさんも、同様な悩みを抱えていたとのことですが、起業後はこれらの悩みからは解放されたようです。
起業した後は、このような悩みよりも、「自分の本領は何だろう」「自分らしいってなんだろう」「自分の得意なことは何だろう」と自分に問いかえることが増えたとのことです。
そして、この自分への問いかけを通して、事業の核となるものを発見し、迷うことなく進む道が開けてきたようです。
「自分の本領は何だろう」という自分への問いかけが、「人との比較」による悩みを遠ざけてくれると思うのです。
Kさんは、ひたすら自分の本領を問いかけ続けた結果、「人との比較」から解放されたのだと感じました。
サラリーマンであっても、同じように自分への問いかけを続けることで、他人と比較せず、自分の果たすべき役割が見えてくるのではないでしょうか。
3.まとめ ~ サラリーマンと起業家に共通すること ~
Kさんと話をして、一つの共通項を見つけました。
それは、「人から可愛がれること」「人に好かれること」「安心して友達になれること(近づきやすいこと)」というヒューマンスキルの大切さです。
このスキルは、「できるヒト」が共通して持っているスキルともいえます。
では、このスキルを身につけるには、どうすればいいか。
Kさんは、「非効率にやってみる」ことで、身につくのではないかと示唆されます。
例えば、人に何かを伝えるときに、効率的に進めるならば、メールや電話を活用することが推奨されます。あえて直接人に会うことは、それらと比較すると効率的ではありません。
しかし、人と会うことで、人とのかかわり方のコツ、伝えたいことを思いに乗せて伝える術を体感することができます。
一見、非効率なようですが、自分の思いを人に伝えるために必要な感覚を人との交流を通して体験できるというメリットがあります。
仕事というキャリアにおいて、このプロセスを通して「できるヒト」のヒューマンスキルが身につくならば、それは「遠回りの近道」とも言えるのではないでしょうか。
「存在感のある人材」になるためには、「人から可愛がられること」「人に好かれること」「安心して友達になれること(近づきやすいこと)」は必須だと考えます。
一足飛びに身につけるようとせず、身近な人と接するときに意識することが大切だと思います。
Kさんとお話しをして確信したことが一つあります。
それは、「自分の本領は何か」と自分に問いかけ続けることで、自分本来の居場所を自ら見つけられることです。
言いかえると「生き抜くチカラ」の原点が確かめられるのです。
遠回りな近道、「非効率」なことを続けることで見えてくるものがあることを確信しました。