40歳代の中間管理職の方へ。
部下とのコミュニケーションで困っていませんか?
自分の考えが伝わらない。
部下が思うように動いてくれない、指示待ちだ。
仕事を任せきれない。
中間管理職となると、上司と部下との狭間でいろいろ悩むことが多くなりがちです。
チームの目標を達成しつつ、部下育成も実現するということは、簡単なことではありません。
とくに、チームが大きな目標を掲げているとき、それに比例して仕事量も増えることから、部下が「価値を創造する」というよりも「目の前の仕事を処理する」という意識に陥りがちになったときに、悩みは増大します。
私もチームマネジメントに悩んだことがあります。
そのとき、仕事量が多いなら、仕事の効率化を考えてもらうことが大切だと仮説をたて、部下にそのことを伝えました。
この仮説とおりならば、仕事の効率化を考えることを通して、「価値を創造する」といったクリエイティブな意識が芽生えるのではないかと想定したからです。
結果は、、、、
「チームの雰囲気はますます悪く」なりました。
中間管理職の役を担ったことがある人ならば、多かれ少なかれ、同じような経験があるのではないかと思います。
今回は、チームの雰囲気が悪くしてしまったことと、それを立て直した経験から、中間管理職として、その状態から脱却するポイントをお伝えします。
1.チームの雰囲気が悪いのは誰の影響か
チームの雰囲気が悪くなっていると感じたとき、その要因はチームのリーダーである自分がその雰囲気を作っていると認識することが大切です。
これは、大変つらいことです。
「面倒なメンバー」がいるからチームの和が乱れている
パフォーマンスの低いメンバーがいるから、チームの士気が低下する
仕事量に対して、配置されている要員が少ない
こういった外部要因を挙げてしまうと、自己解決できないだけでなく、この考えがメンバーに伝わり、「逃げ腰の上司」という印象を与えてしまいます。
実は、この「逃げ腰の上司」がチームの雰囲気を悪くしているのです。
「部下は上司を3日で見限る」と言われるとおり、上司の一挙手一投足はつぶさに観察されていると認識して間違いないです。
プロ野球を見ていても、監督の姿勢によって、チームの雰囲気が変わることがあります。それと同様に、上司としての姿勢が、チームに与える影響が大きいのです。この当たり前のことを自己認識することが大切になります。
私は、この当たり前のことを自分事として認識するまでに、相当葛藤しました。
2.中間管理職としての葛藤から脱却する3つのポイント
その葛藤から脱却するために、つぎの3つのことに取り組みました。
2-1:「やり方」ではなく「あり方」
自分の立ち振る舞いを振り返ったとき、中間管理職として、メンバーに「やり方」をこと細かく伝えていたことに気づきました。
いわゆるマイクロマネジメントです。メンバーのためと思いつつ実行していたことが、彼らに発想する機会を奪っていたと感じるようになりました。
そこで、「やり方」を伝えるよりも、仕事の意義とメンバー各自の思いをつなげることを目的とした「あり方」を伝えるように心がけました。
「やり方」を伝えていた自分は、メンバーを指示待ち族にしてしまっていたことに気づいたのです。
2-2:自己開示と相互理解
つぎに、自分自身のことをあまりに伝えていなかったことに気づきました。私がどういう思いで仕事に取り組んでいるかということを、ありのまま伝えました。
「私が効率化の大切さを伝えていたのは、実は各人の人生で自由になる時間をより多くもってもらいたかったからなんだ。1日のうち、自分が自由に使える時間は思いのほか少ない。とくに仕事をしている平日は、意識して自分時間を創らないと、漫然と時を過ごすことになる。だから、自分の時間を大切にしてほしいと思っているんだ。」
中間管理職として、こういう類の話をする人はあまりいなかったようで、メンバーはきょとんとしていました。
しかし、このような思いをミーティング等の機会で伝え続けたところ、徐々に私の思いは伝わってきました。
ある日のミーティングで、メンバーから「自分時間の大切さ」についての考えが示されたことがありました。そして、それ以降、他のメンバーにもそれが伝播していったのです。
そこから、メンバーからも、「時間」に対する思いが語られるようになり、各人の仕事に対する思いについての相互理解が進みました。
ちょうど、このタイミングで採用選考に用いる適性検査をメンバー各自に受検してもらい、その結果をもとに相互で仕事に対する価値観を語りあう機会をもちました。
(タイミングが偶然重なった、いわばラッキーパンチだったのですが、相互理解がより進むことにつながりました。)
その当時のメンバーと最近会食した際、9年も前のこの出来事を、とても印象深く覚えていてくれたことを知りました。
中間管理職である自分が自己開示したことと、メンバーが相互に理解し合う機会がきわめて重要であることを体験的に気づいたのです。
2-3:勇気をもって任せてみる
メンバーに仕事を任せる際に、アウトプットが読めない仕事を任せるには相当勇気が必要です。方向違いの結果になることを怖れていたのだと思います。
2-1でもお伝えしたように、メンバーに仕事を任せない限り、部下育成は実現されませんし、なにより、中間管理職である自分が手一杯になってしまいます。手一杯の状態ではチームを適切にマネジメントすることは難しくなります。
そこで、私は概要と最終ゴールの姿だけ示して、思い切ってメンバーに任せてみました。その際に、メンバーにはつぎの2点を伝えました。
- プロセスは問わない(アウトプットが最終ゴールの姿となっているならば)
- 6割完成したら、しかるべきタイミングで報告してほしい
実行したところ、メンバーはタスクの重責にプレッシャーを感じつつも、意気に感じて仕事に取り組んでくれるようになりました。
思い切って任せるにしても、丸投げではなく、きちんと裁量を与え、伴走する姿勢を伝えることで、メンバーが活力をもってくれることに気づきました。
3.まとめ 「仕事、楽しいですか?」と問いかける意味
それ以来、メンバーに「仕事、楽しいですか?」というシンプルな質問を意識的になげかけるようになりました。
シンプルな質問ですが、本当に楽しければ、「楽しいです」とクイックレスポンスがあります。
逆に楽しくなければ、「勉強になってます」「やりきろうと思います」というように質問への直接の回答をしなかったり、反応が遅かったり、回答しなかったりします。
たしかに、仕事は常に楽しいものではないかもしれません。
ただ、「楽しい」と思える時間を少しでも長く感じることは、大切なことと考えます。
中間管理職として、メンバーが「楽しい」と感じる時間を創出することができれば、メンバーの豊かな人生を創出することにもつながります。
そのためにも、「あり方」を伝える、自己開示する、思い切って仕事を任せる、に取り組んでみる価値はあると思うのです。
「仕事、楽しいですか?」というシンプルな質問から、チームの状態を把握できたり、マネジメント上の課題が見つかったりするのです。