仕事は誰かと協業しながら完成させるもので、決して一人で完成させられるものではありません。したがって、自分の前工程と後行程を意識して、仕事を俯瞰的にみるチカラが大切になります。
2000年頃から日本の大手企業を中心に成果主義型人事制度が導入されました。成果主義の名から、「米国型の人事制度は日本にはなじまない」といった声があがりました。
人事部門でその導入に携わっていたとき、「チームワークが乱れる」といった批判的意見をよく耳にしたものです。
たしかに、一部の人は個人プレーに走り、「自分さえよければ良く、成果さえ上げれば文句はないだろう」といった姿勢で仕事に取り組み、ある意味で組織の和を乱したこともあります。また、他人の仕事への関心度が低くなり、個人主義的な仕事のやり方が進んだ一面もあります。
45歳を過ぎると、管理職になれる人となれない人が徐々に分かれてきます。10人に1人しか課長に昇進することができない時代とも言える昨今、それはやむを得ないことでしょう。
しかし、私は昇進することだけが是であるとは考えません。
冒頭に述べたように、仕事は誰かと協業して完成させるものと捉えていますので、組織において、存在感のある仕事をすることに、働くことの意味があると考えからです。
「存在感ある人材」となるためには、何が求められるか。求められる3つのポイントについてお伝えします。
1.結晶性知識を再発見する
本ブログ「熱量を出しきった経験から、みえてくるものがある」でも書いたとおり、自分が経験したことのなかに、その人ならではの価値があります。積み上げた経験は、あたかも結晶のように研ぎ澄まされた知見となるのです。
「存在感のある人材」となる前提として、自分の中にある「結晶性知識」を再発見することが大切です。
どんな小さなことでもよいので、自分が他者に誇れる経験、他者のために役立てる経験を洗い出すのです。
私の場合、仕事上、人事に関連するクレームに対峙することが多々ありました。その大半は制度に対する不満、人間関係にかかわる不満といった簡単には解決できないものばかりでした。
とくに、自分に直接の原因がない問題で。言葉にトゲのあるクレームを受けたときは、心底嫌な気持ちになりました。ですから、こういった問題にかかわることは好きではありませんでした。
ただ、経験を積むことで、トゲのあるクレームをつけた人と打ち解けたり、他の人の役に立つことが多くなりました。好きではなかった仕事でしたが、今では、ある程度余裕をもって対応できるようになりました。
つまり、好きではなかった「人事に関連するクレーム対応」ですが、今では、私の結晶性知識の一つになったのです。
「存在感のある人材」であるための源が「結晶性知識」なのです。
2.結晶性知識の活かし、「存在感のある人材」になる3つのポイント
2-1:伝承役に徹する
自分の価値は、自分で伝えなければ伝わりません。どのような場面で、どのように役立つことができるか。このことを意識して行動することが大切です。
人によっては、仕事を抱え込んでしまうことがありますが、これは「存在感のある人材」となるためには、望ましくないです。
「仕事が人に付いてしまう」ことは往々にしてあります。属人的な仕事はブラックボックス化しやすくなり、最終的にその人がいなくては仕事が進まなくなります。これも、ある意味で「結晶性知識」と言えなくもないですが、「伝承していく」という行動が欠けています。
「伝承する」という行動は、組織で仕事をし、組織にとって有益な行動を取る、という意思があるからこそできるものと考えます。ゆえに、「伝承する」という行動が伴わない「結晶性知識」は「存在感のある人材」となるためにはマイナス効果となるのです。
2-2:チーム全体のコーチ役に徹する
「伝承する」ことと近しいのですが、チームビルディングに尽力する上司を後方支援することで貢献する行動が大切です。それは、あたかもチーム全体のコーチ役を担うとも言えるでしょう。
そのためには、自分から、あえて発信することが極めて重要です。
たとえば、「ホウレンソウ」を通して、自分が貢献できる仕事上の課題を探し、そこに自分の結晶性知識を活かして解決していくことを実行すれば、他の模範にもなります。そうなれば、自然と周囲から存在が認めらえるようになるはずです。
仕事を通して、さりげなく大人な立ち振る舞いで実行できると、カッコイイですよね。
2-3:将来のキャリアとのつながりを連関させる
再発見した「結晶性知識」を、自分の将来のキャリアにどのように活かしたいか、イメージを深めることが大切です。
せっかく培った「結晶性知識」です。それを会社のためだけではなく、自分のために活かすようにイメージすると、思わぬ発見につながることがあります。
「結晶性知識」は、過去の経験を紡いでいくことで発見されるため、その一つひとつ、および、そのつながりに意味づけをすることになります。
たとえば、過去においては意味のない経験と感じていたことが、今となっては意味のあるものであったという発見があるのです。
こういった発見を通して、自分の将来のキャリアとのつながりをイメージすると、「結晶性知識」がより研ぎ澄まされていくことになります。
3.まとめ 「結晶性知識」を見つけ出そう!
「結晶性知識」を活かすには、組織に貢献しようという謙虚な姿勢と、自分の将来展望に活かそうという意欲が大切です。
こういう人は、役職という地位についていなくとも、周囲の人からリスペクトされます。一目置かれた存在になるでしょう。
つまり、
【 一目置かれた存在 】=【 存在感のある人材 】
となります。
それゆえ、45歳を過ぎて「結晶性知識」を再発見することは、自分のキャリアを再生させる点で、極めて重要なのです。
再発見できれば、きっといいことが見つかります。