企業のリストラ策としての人員削減。日本の労働法制の下では、企業は業績が相当悪化していない限り、指名解雇という手段を講じることは簡単ではありません。それゆえに、社員に対して希望退職を募集するという手段が使われます。
希望退職という手段は、ある程度企業体力に余力があるときに、経営体質の改善・強化することを目的に講じられるます。その意思決定は、一般的には経営判断として下されるため、危機感が社員に伝わりづらいという側面があります。
したがって、希望退職という手段は、気づかないうちに忍び寄ってくるのです。
希望退職を装って
希望退職は、社員の意思を尊重するため、一般的には会社から退職を促されないものですが、あたかも希望退職のように退職を促される場合があります。
「来年度はあなたに担ってもらう仕事はありません。もし、会社に残りたければ、あなたを引き受けてくれる部署を探してください。そのような部署があれば、残れます。」
「そのような部署がなければ、2週間後にはセカンドキャリアプログラムに移ってもらいます。つまり、退職することを考えてもらいたいのです。」
会社がこのように促してくることが実際にあるものです。
希望退職ではないが、退職勧奨
実際に私が人事担当として、退職勧奨したときのことを思い出します。
ある事業部の業績が好転せず、会社はやむを得ず50歳以上の社員のうち、パフォーマンスが低い社員を退職勧奨対象者としました。
人事担当の他、その事業部の役職者が会議室に集められ、つぎのように退職勧奨対象者に伝えることを確認したのです。
「別室に個別に呼び出し、端的に、来年度は担ってもらう仕事がないため退職してほしい、と伝える。再就職支援策としてキャリアカウンセリングプログラムをつけること、退職割増金を○○%上乗せすることも伝える。」
「最近どんな状況下といった近況を聞くようなことはしない。会社が伝えるべきことのみを伝える。」
一緒に働いてきた同僚にこのようなことを伝える事業部の役職者がとても辛そうな表情でした。とても辛い場面でしたが、いざ会社が方針を固めたら、退職勧奨対象者に選択の余地は残されていないことを痛感したことを鮮明に覚えています。
まとめ
退職勧奨対象者の多くの人は、自分の居場所が無くなったため、再就職先を探し、新たな職を見つけることになるのですが、人によって明暗が分かれたいたと感じています。
その差は、「自分が何のプロであるか」をはっきりと言えるか否かにありました。
「自分が何のプロであるか」がはっきりしている人は、その道での再就職を叶えましたが、はっきりしていない人は、まったく畑違いの業界に再就職していきました。
自分のプロフェッショナリティがはっきりしていないと、いざというときに、うろたえることになります。
「もし、明日の月曜日に、あなたには退職してほしい。」と宣告されたとき、自分はどういう道を選ぶだろうか?
普段はこのようなシビアな問いを自分に投げかけることはないと思います。
しかし、あえて「自分が何のプロであるか。」を振り返り、自分を見つめ直すためには、最適な問いです。
「余力」のあるときに、自分自身に問いかけてみることをオススメします。
もし、その問いに答えることができなくても心配することはありません。「余力」のある状況であれば、しっかりと自分の過去を精査すれば問いへの答えが見えてくるからです。
今日は12月1日。
2019年も残すところ、あと1ヶ月です。
この1ヶ月に、「自分が何のプロであるか。」を見つめ直してみましょう。
本日も、お読みいただきありがとうございました。