「入社5年目の部下(以下、Yさん)がやる気があるのか、ないのか、よくわからないんですよ。」
「仕事のヒントを与えて、やり方を伝えたとしても、それがよかったのか?」
「彼が、今の仕事を続けることが良いのか、わからなくなってしまうんです。」
IT部品の業界でグローバルに展開している会社で活躍している管理職のHさんから、部下マネジメントの相談を受けました。
Hさんは45歳。大学を卒業した後に、3回の転職を経験しているグローバルビジネスのプロフェッショナルです。
45歳で管理職を任されているからには、組織のパフォーマンスを上げて業績を出すことが求められているからこその悩みを解決したいということが相談の目的でした。
育成する余裕がなくなっている
グローバルビジネスの厳しさは、競合相手が国内のみならず海外にもあり、且つ、市場が海外にあり、日々競争が激化していることにあります。
Hさんはこう語ってくれました。
「業績が上向き傾向にある時と違い、会社の成長が横ばい、または、下向き傾向になると、余裕がなくなります。」
「端的に言うと、多少パフォーマンスが悪くても、いつか育ってくれるという期待を持つことができなくなっているんです。」
「Yさんは、2カ国語ができ、経済学部卒業で貿易の知識もあります。」
「しかし、つねに受け身で、やる気がないんです。」
受け身であることに違和感のないYさん
Hさんは、Yさんのやる気を引き出そうとして、つぎのような工夫をされていました。
①月曜日にタスクを確認する
②水曜日にタスクの進捗報告を受ける
③金曜日にタスクの積み残し課題を整理し、次週につなげる。
しかし、この一連の流れが完遂されることは、ごくまれのようです。
なぜならば、月曜日のタスクを確認した以降、YさんからHさんに報告されることがないからです。
HさんはYさんに主体的に動いてもらいたいと感じているものの、Yさんは「受け身であることに違和感」を感じていない。
両者の溝を埋めなければ、Hさんが抱えているマネジメントの悩みを解消されないと
私は考え、つぎのような提案をしてみました。
自分の弱みを見せて、共感ポイントをつくる
上司と部下とのかかわり方に課題を一発で解決する特効薬は存在しません。
それゆえに、私が部下マネジメントにかかわる相談を受けるときに、少し時間を要するヒントをお伝えしています。
Hさんにもそれをお伝えしました。
そのヒントは、上司と部下との間で、共通言語を持つことです。
共通言語を持つには、上司として2つのことに着手する必要があります。
第一に、組織の目標を上司が自分の言葉で部下に伝えることです。
自分の言葉で伝えるには、上司としてどのように組織の目標に向き合っているかという覚悟が示されるからです。上司としての熱量が部下に伝わるというメリットがあります。
そして、このことは、つぎにお伝えすることの土台になることでもあります。
第二に、自分の弱みを開示することです。
上司であるがゆえに、「できる上司」でありたいと思うことはごく自然のことです。
あえて、上司として自分の弱みを開示するには勇気がいります。できることならば、見せたくないと思うでしょう。
しかし、自分の弱みを開示することは、部下との距離感を縮めることにつながります。
「上司も自分と同じような悩みを抱えたことがあったんだ。」と部下が共感することが往々にしてあるからです。
まとめ
上司として取り組む2つのことは、部下の行動を変えるということに力点を置くよりも、上司としてのあり方を言語化することでもあります。
上司として、どのような組織業績を実現したいのか。
上司として、どのような失敗を乗り越えてきたのか。
今日お伝えしたことは、あくまでも、部下マネジメントの入り口の部分です。
簡単なようで、実行するには、それなりの労力が必要になることです。即効性がないがゆえに、取り組むことに意義を感じづらいため、多くの方がスキップしてしまうことでしょう。
しかし、1回でもこのような取り組みを実行することで、なんらかの反応をつかむことができます。
その反応をつかむことが、部下マネジメントを解決する糸口をつかむことになります。
まずは、1回、しっかりと準備したうえで、部下と話し合う機会を持つことをオススメします。
本日も、お読みいただきありがとうございました。
(追伸)
Hさんは、さっそく試すことを約束してくれました。
Hさんがこれから取り組む部下マネジメントの取り組みについて、【実録:相談事例】としてお伝えすることで、部下マネジメントを擬似的に体感していただけると思います。