キャリアの相談を受けているとき、気づくことがあります。
自分の長所としてPRしていることと、自分の実際の言動が一致していないことがあるということです。当の本人が、その矛盾に気づいていないことが原因です。
なに?と思われた方が多いことと思いますので、相談事例をもとに、どのようなことが起きているかをお伝えします。
Zさんの事例
Zさんは転職活動中です。現在の会社は自分には合ってないので、職場を変えたい。これがZさんの転職活動の動機でした。忙しい業務の合間をぬって、転職活動の準備として、少しずつ経歴の棚卸を進めていました。
私と対話する中で、Zさんは自分のありたい姿をつぎのように表現されました。
「だれかのために、与えることを喜びと感じる。」
そして、続けて、今の現状を話し始めました。
「それが、今の会社では感じることができないんですよね。」
「自分の言っていることを受けれてもらえなくて、提案することに無力感を感じるのです。」
「そういう人たちと仕事をすることに嫌気がさすんですよね。」
それに対して、私はこのように問いかけました。
「Zさんが大事にしていることはわかりました。」
「ただ、今、Zさんが取り組んでいる仕事の納品先でもある社内の人が、会社の課題に対して困っている人だとしたらどうですか? その人に対して提案することで、与える喜びを感じられませんか?」
Zさんは答えます。
「自分と同等のレベルでないと、わかってもらえないという実感があるんです。」
「そういう人には、与えようというよりも、適度な距離感でつきあうようにするんです。」
「こちらの提案の裏にある事情のことをよくわからない人に、とやかく言われたくないんですよ。」
気づかない矛盾
ここまでお読みいただいて、Zさんが矛盾していることを言っていると気づかれたでしょうか。
「与える喜び」を仕事をする上での価値観として捉えている。
今の会社では、その「与える喜び」を感じることができない。
ゆえに、今の会社から転職しようとしている。
Zさんの考えをまとめると、こうなります。
しかし、Zさんが大切にしている「与える喜び」を別の角度から見てみると、Zさんのことを理解してくれない社内の人に対しては、新しい視点や考え方を「与え」、それが彼らの新しい気づきにつながるという「喜び」を感じられないことになります。
私には、Zさんの中で矛盾している二つの考え・思いが存在していることが、はっきりと認識できました。
まとめ
「自分のことは、よくわからない。」とよく言われます。
Zさんの事例のように、よくよく話を聞いてみると矛盾していることを言っているケースはよくあることです。
自分の理想と実際に自分が取り組んできたことに一貫性が見られないとき、それを受け止める側は違和感を感じます。
その違和感は、「本心で話をしていない。事実を伝えていない。」という不信感につながります。
キャリアを自分の意思で変えようとしているとき、自分の理想と自分の言動との間に一貫性が必要です。
一貫性のない話は、その内容の信用度を下げます。このことを十分認識しなければいけません。
Zさんは、矛盾に気づき、自分のあり方をあらためて見直すことになりました。
本日も、お読みいただきありがとうございました。