転職という大きく、難しい決断に迫られ、迷いを感じるとき、「直感」に頼って転職することを選ぶと、思わぬ後悔につながることがあります。
昨日ご紹介したSさんの事例にも見られるように、「直感」は時として、認知のゆがみを生み出してしまいます。
Sさんの後悔の原因は、つぎの3つにありました。
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キャリアの選択にあたり、現状維持モードを軽視したこと
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悩み、考えることに疲れて、「直感」を信じたこと
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悩み、考えることをアタマの中の作業にとどめてしまったこと
これら3つの原因は、認知のゆがみを生じさせ、決断を鈍らせ、意思決定の覚悟も小さくしてしまいます。ゆえに、この点をアタマの片隅におきつつ、転職するか否かを検討していくことが大切になります。
Sさんは、「自分の選択が正しかったのか」「転職先でうまくやっていけるのか」という思いを抱いたことで、転職しなかった方がよかったのではないかという思い(迷い)を持ちに、後悔という念を抱いたのです。
そこで、今日は、「なぜ、今の会社に残った方がいいと考えてしまうのか」ということについて、考えてみたいと思います。
変わりたいけれども、変わりたくない
不思議なもので、自分のキャリアについて、変わりたいと願っているとき、それに至るプロセスはあたかもゲームで難しい局面をクリアしているかのように楽しめるものです。変わりつつある自分を体感できることは、できている自分を感じ、達成感を感じるからです。
しかし、自分のキャリアとゲームは当然異なります。自分のキャリアは、自分の大切な人生の行方に大きな影響を与えます。それゆえに、自分の意思で、自分のキャリアを大きく変えるという思いを持つとき、「変わりたいけれども、変わりたくない」という不思議な感情を抱くのだと、私は考えます。これが、『迷い』につながってしまうのです。
自分の意思の強固さ(つまりは覚悟)が盤石でないと、「変わりたいけれども、変わりたくない」という状態がうまれ、結果として、考えがまとまらず、現状維持したくなってしまいます。
ベターか、ベストか
考えがまとまらないという状態が、現状維持したくなる思いにつながると、転職しない方がいいという決断に落ち着きます。それが、総合的に考えてベターな決断であると考えるからです。
しかし、なんとなく釈然としない感覚が残ってしまいます。
Sさんの場合は、一度転職しない方がいいという決断に落ち着いたと感じたものの、必ずしもそうではなかったのです。
ベターな決断であるがゆえに、転職する方がいいという思いがふとした瞬間に思い出されてしまうと、決断が揺らぐからです。
それゆえに、転職という大きく、難しい決断に迫られ、迷いを感じるときは、その決断を下すときのベストな決断が必要になると、私は考えます。「なんとなく転職した方がいい」「なんとなく転職しない方がいい」という決断ではないことが大切なのです。(「なんとなく」という部分は、「直感」だと私は考えます。)
繰り返しになりますが、決断を迫られるときに、自信をもって、「そのときのベスト」を手にすることが重要になるのです。
まとめ
「そのときのベスト」を手にすることは、将来を見通したときに、必ずしも100点満点の決断とはならないものです。しかし、「そのときのベスト」とは、決断をしたときの主体的かつ自律的な「じぶん」が、腹落ちした決断であることは間違いありません。
その決断は、ほかならぬ「じぶん」が、「じぶん」の責任として、「変わること」を選択しているからです。ゆえに、たとえ結果が思うようにいかなかったとしても、冷静に受けとめ、次の打ち手を模索できるのです。
会社に所属していると、人事異動によって、他律的に自分のキャリアが大きく変わることの方が多いため、自分でキャリアを考える機会は多くありません。
なぜ、「今の会社に残った方がいい」と考えてしまうのは、
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そもそも主体的かつ自律的に「じぶん」のキャリアを決断する経験値が少ないということ
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主体的かつ自律的に「じぶん」が腹落ちした決断を下せていないこと
の2点がその原因であると、私は考えます。
腹落ちする決断を持つためには、準備を的確に行わなければならないのです。
本日も、お読みいただきありがとうございました。
(昨日は諸事情により連載が途切れてしまいましたが、今日から再開します。このシリーズは、明日の連載に続きます。)
【参考:本シリーズの過去記事です】
hiratsukacareer.hatenablog.com