「人は変化を嫌うもので、変化が伴うときは強烈に現状維持モードになる」ということを前もって認識しておくことが重要だと、昨日お伝えしました。
大きく、難しい決断に迫られているときは、緊張が続いてしまいます。
同時に、現状維持モードになると、アタマとココロも冷静に判断する余裕をなくしててしまいます。
45歳を過ぎて転職するというキャリアチェンジを考えるとき、慎重になる必要があることは当然のことです。しかし、時として人は慎重になるべきときに、その慎重さを失うことがあります。
「直感」を信じてしまうことがあるのです。
「直感」を信じたSさんの事例
Sさんは42歳のときに転職するか否かの選択に悩んでいました。彼は、自分の力を発揮できそうで、かつ、自分を求めてくれている会社に行きたいという思いを抱いていました。40歳を過ぎた転職活動も順調に終え、いざ内定通知を受け取ったときから、彼の悩みは益々深まりました。
「今の会社に残った方がいいんじゃないか?」
どうして悩みが深くなったかを聞いてみました。
「今までこの会社に育ててもらったのに、ほんとうにいいのか?」
「給料が減ってしまうけれども、生活はやっていけるのか?」
「今の会社で我慢すれば、いいことがあるかもしれないのでは?」
「今の会社に残っていても、いいことはないはずだ。」
「出向や転勤があったりするけれども、家族と別に生活することは耐えられるか?」
「今の会社も合併とかあるかもしれない。。。」
彼は、会社に退職する旨を伝えましたが、慰留されました。慰留されて、再度考えることにしたのです。しかし、最終的に、彼はつぎのように考え、転職することを決断しました。
「今の会社が合併したりしたら、自分のポストはなくなるだろう。ならば、今が転職のタイミングだ。」
考えに考え抜いた結論というよりも、自分の「直感」を信じたようなのです。
Sさんの後悔
転職を決断してから、Sさんは強烈な現状維持モードに襲われます。
「このような選択をした自分は正しかったのだろうか。」
「うまく転職先でやっていけるだろうか。」
40歳を過ぎた大きく、難しい決断をしたにもかかわらず、そのために必要な覚悟が足りなかったと、Sさんは振り返ってくれました。
自分ひとりで、アタマの中で悩み、考える作業を繰り返していた
1ケ月近くも悩み、考えたけれども、結論がでなかったので、「直感」に頼った
思うに、悩み、考えることに疲れてしまっていたから、「直感」に頼ったのかも。
現状維持モードによって、Sさんは転職という選択をしたことを猛烈に後悔しはじめたのです。
Sさんの後悔の原因
私は、Sさんの後悔の原因は3つあると捉えています。
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キャリアの選択にあたり、現状維持モードを軽視したこと
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悩み、考えることに疲れて、「直感」を信じたこと
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悩み、考えることをアタマの中の作業にとどめてしまったこと
キャリアの分岐点における「選択すること」への極度のプレッシャーと自分の認知にゆがみが生じることが、これら3つの原因を引き起こし、後悔につながったということです。
40歳を過ぎた転職で、後悔することは絶対に避けなければいけません。ゆえに、Sさんの後悔の原因となった3つのことを教訓として活かすことが大切だと、私は考えます。
まとめ
転職という大きく、難しい決断に迫られ、迷いを感じるときは、Sさんの後悔の原因になった3つのことを思い出してみることをおススメします。
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キャリアの選択にあたり、現状維持モードを軽視したこと
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悩み、考えることに疲れて、「直感」を信じたこと
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悩み、考えることをアタマの中の作業にとどめてしまったこと
大切なことは、その前段階で、自分にかかわる情報をあぶり出し、整理し、その上で何が適切であるかを判定することにあるというプロセスを踏むということです。ゆえに、「現状維持はNGだ。」とか「「直感」を信じてはいけない」ということではありません。
大きく、難しい決断をするとき、「現状維持モード」が認知のゆがみを作り出し、決断を鈍らせるとともに、覚悟の程度も小さくしてしまうことが往々にしてあります。
転職という大きく、難しい決断に迫られるとき、このことをアタマの片隅に置いておくことが、迷いを抜け出すヒントになりそうです。
本日も、お読みいただきありがとうございました。
(明日の連載に続きます。)
【参考:本シリーズの過去記事です】