ミドルクライシスという言葉を最近よく耳にします。45歳を過ぎた頃から、会社のなかでのポジションがなく、明るい将来が見えてこない世代にとっては、切実な響きをもつ言葉だと感じています。
定年年齢を65歳とすると、20年以上もの職業人としてのキャリアが残っています。この20年を、ミドルクライシスという言葉で表されるキャリアの危機として捉えることは絶対に避けなければいけません。
危機として対峙するには、あまりに長すぎる期間だからです。
私も42歳のときに、まさにミドルクライシスを身をもって経験しました。自分にとって、まったく不本意な人事異動から始まりました。
自分が今まで築いてきた自信
なぜ、今さらつまらない仕事をしなければいけないのか
こんな思いに苦しめられる人事異動を、私は冷静に受けとめることができませんでした。
今に振り返れば、自分の思い上がりいがいのなにものでもありません。
ただ単に、自分が想定していないことに対応する適応力が著しく低かっただけだと思うからです。
したがって、私が42歳のときに感じたミドルクライシスは、実際にはそのように評価されるものではなかったと、今振り返ると感じています。
私が感じていたミドルクライシスは、自分の行き先を見失い、自分のキャリアの方向感を自ら放棄したようなものだったと思うからです。
なぜミドルクライシスを感じるのか
私は、ミドルクライシスを「45歳を過ぎて、自分の行き先を見失い、自分の言葉でキャリアの方向感を語れなくなる」ことだと認識しています。
45歳を過ぎていれば、社会人として20年は働いていることでしょう。それが、どのような働き方であったとしても、20年の歳月を通して、自分のコア・キャリアを何かしら持っているはずです。
しかし、人は、今まで大切に積み上げてきた自分の歴史が踏みにじられるように感じるとき、自分のコア・キャリアが無価値であるように感じられてしまうことがあります。
これが、ミドルクライシスを招くのだと、私は考えています。
つまり、自分のみならず、他者からも認められていないという感覚が、社会人としてのキャリアの残期間の儚さと相まってミドルクライシスを感じるということです。
冷静にミドルクライシスと対峙する
ミドルクライシスと感じるとき、「その正体が一体なにであるか」を確かめることが大切だと、私は考えます。
ミドルクライシスは、暗闇の真っただ中にいるようなものです。
そして、そのような暗闇の真っただ中にいるように感じるとき、とうぜん、人は視界を失ってしまいます。その暗闇が、自分で自分にアイマスクをかけていることによって引き起こされているものかもしれないのにです。
どうして、自分が自分のキャリアを認められないのか。
どうして、他人が自分のキャリアを認めていないと感じるのか。
42歳のときの私が、冷静に自分のキャリアを振り返っていたならば、おそらくミドルクライシスを感じることはなかったでしょう。
それは、なぜか。
自分のほんとうの存在価値に気づくことなく、他者からどのように見られているかということを意識しすぎていたからです。
自分のキャリアを立て直す
ミドルクライシスを感じるとき、それに抗おうとするのではなく、冷静に対応することが必要です。冷静に備えるということです。
自分のキャリアを立て直す絶好の機会と捉え直すくらいでいいのだと思うのです。
自分らしい仕事や貢献のあり方を捉え直す
今の組織の中で、自分ができることは何であるか
転職を考えたり、人事異動の希望を申告したりすることよりも、自分の存在価値を冷静に捉え直し、自分のキャリアを立て直すことを意識することが、なによりも重要となります。
「急いては事を仕損じる」と言われるように、暗闇の中にいるように感じたとしても、冷静に方向感を取り戻すことが、自分のキャリアを立て直すことにつながるからです。