組織の「長」を任されることは、組織からの期待の表れです。
求められることは2つ。
①組織の成果を上げること、②部下のチカラを上げること、です。
しかし、この2つの期待に応えられない、すなわち、チームビルディングできなければ、「長」である自分の組織における存在価値が低下します。チームビルディングに失敗してしまうと、ポジションからポストオフされる可能性が格段に高まるのです。
45歳を過ぎていれば、チームビルティングは、「できて当然」ということが前提であると認識しなければいけません。
組織の成果を上げるには、部下のチカラが上げることが求められます。
あたりまえのことですが、部下ののチカラを上げることは、簡単ではありません。
一つの解決策として、「部下を誉めること」が効果的であると言われていますが、マネジメントの最前線にいる「長」の多くの人が、部下の誉め方でアタマを悩ませているように感じています。
そして、評価面談の季節にその悩みが一気に増えると感じています。
「何をどうやればいいのか?」。
部下を誉めると言っても、どういう話し方をすればいいのだろうか?
人事に、こういう相談が多く寄せられます。そこで、部下を誉めるためのヒントとして、 「8:1:1の法則」 を伝えします。
「8:1:1の法則」の意味は、「8(承認):1(改善):1(提案)」です。
最初の8割は、誉める
なにはともあれ、部下のことを認めることが大切です。最初の8割が部下との信頼関係の土台になるからです。
私は次のようなことを意識して実践しています。
①部下の感情を確認する
「部下がどのような思いで仕事をしているか」ということを確認することは、見過ごされがちですが、とても大切です。日々接していて、わかっているつもりでも、上司と部下との間ではギャップがあるものです。
部下の感情を確認する質問は、シンプルなものがよいと思います。
楽しかった仕事はなに?
辛かった仕事はなに?
抽象的な質問ですが、注意深く部下の反応をみることで、ギャップに気づくことがあります。また、アイスブレークにもなります。
②存在を承認する
部下の具体的な貢献を示すことが大切です。ただ単に「いてくれて、ありがとう」ということではなく、部下がかかわった仕事の意味を、上司として伝えるのです。
私の経験をお伝えします。
プロジェクトを進めるにあたり、さまざまな先行事例をリサーチする役割を35歳の部下に任せました。部下は、参考になる事例とそれにかかわる考察を提示してくれました。
私は、そのリサーチがなければプロジェクトは成功しなかったと感じてたので、その部下を陰の功労者と認めていましたので、面談のときにそのことを伝えました。
しかし、この仕事に対する部下の捉え方は私と真逆でいた。
部下は単に作業をしただけという自己評価をしていたのです。
実際に話をしてみてこのギャップに気づいたので、私が感じていることを率直に伝えました。
そうすると、部下は驚きの表情とともに、うれしそうな表情をうかべ、こうつぶやきました。
認めてくれていたんですね。
この経験から、私は、部下の存在を承認するとは、「部下の自己評価を形にする」ということであると考えるようになりました。
「部下の自己評価を形にする」ことで、部下の気づいていない貢献度を明確にするとともに、「みていてくれたんだ。みとめてくれていたんだ。」という信頼ができあがるのです。
つぎの1割で、改善をしめす
8割のつぎの1割は、改善です。
ただ単に誉めるだけで終わるのではなく、つぎにつなげるために改善すべき点をフィードバックするということを意味します。
ここでのポイントは、できていないこと、未完了のことを具体例を通して伝えることです。
依頼した仕事の報告がタイムリーにないよね
納期遅れが目立つよね
最初の8割でしっかりと信頼ができあがっていれば、つぎの1割示す改善について、部下は真摯にうけとめてくれるはずです。
最後の1割で、提案する
誉め→改善のつぎは、最後の1割で具体的な提案してみます。このときも、最初の8割で信頼ができあがっていれれば、部下は真摯にうけとめてくれるはずです。
上司からの指示命令ではなく、部下に考えてもらう余地を残して提案するという視点が大切になります。
お願いした仕事について、7割方完成したところで報告してもらえたい。次の一手が打ちやすくなるから。どう思う?
納期に遅れないようにスケジュール管理をしっかりやってほしい。スケジュールを逆算して組み立ててみたら?やり方でわからないことはある?
提案だけだと、会話が一方通行になってしまいがちです。それゆえに、部下に考えてもらうことで、提案をもとに対話し、コミュニケーションの質を上げるのです。
誉めることの効果
部下を誉めることの効果は2点あります。
①部下の表情が明るくなる
部下のよいところをほめると、その数に比例して、コミュニケーションの総量が増えます。また、総量だけではなく、質もあがります。
部下自身が「認めてもらっている」という実感をもつことにつながることで、結果的に部下の心のなかで自己承認が進むからです。
②上司である自分も気持ちよくなる
よいところを誉めると、不思議と自分も気持ちが明るくなります。部下を誉めることで、思考がポジティブになり、部下への感謝の気持ちが明らかになるからでしょう。
上司である自分のこころに部下を思う余白が生まれることで、気持ちが楽になるからです。
まとめ
部下を誉めるヒントとして、「8:1:1の法則」をお伝えしました。
ただ単に部下を誉めるだけではなく、部下に改善点を示し、部下に考えてもらう提案をするというプロセスが効果的ということです。
「8:1:1の法則」は、「8(承認):1(改善):1(提案)」。
この法則を意識することで、①組織の成果を上げること、②部下のチカラを上げることが実現できます。
部下に対する関心と感謝と、部下にかかわろうという意識をもって「部下をトコトン誉める」と、上司も部下も自律的に考え、行動しようという前向きな気持ちが生まれます。この気持ちが生まれることが、チームビルディングにつながります。
「8:1:1の法則」を意識して取り組んでいただくことで、よい結果につながると嬉しいです。
補足
部下との面談における、私の経験則を補足としてお伝えします。
・部下との面談で、上司は話しすぎないこと。説教じみてしますから。
・少なくとも30分は時間をとること。理想は45分。長すぎず短すぎないから。
誉めることの効果について、とても参考になる記事がありましたので、投稿者さまにご承認いただけたので、ご紹介します。
https://www.simple-akineblog.com/entry/2019/05/15/203716