45歳を過ぎると自分が所属している会社での役割の行く末がおぼろげながらに見えてきたりします。その行く末が明るい未来であるならば、自分に満足できます。当然のことですが、逆の場合は自分に満足できないために、得てして、「環境を変えること」に活路を見出すことがあります。
たしかに「環境を変えること」は、現状を打破することにつながる予感がして明るい未来を自ら勝ち取ることができるワクワク感につながります。人は、ワクワクすることで気持ちが前向きになるため、そのことに取り組むことが自分にプラスになると信じることができます。
キャリアの転換期において、「環境を変えること」はいくつかの方法があると、私は考えます。代表的な方法の一つである「会社を変える」(「転職」)という方法が、45歳を過ぎたキャリア転換で有効な方法であることは間違いありません。
もっとも、「転職」を考えるときに、やってはいけない禁じ手があります。
それは、「他人の転職体験談を鵜呑み」にしてしまうことです。
【目次】
自分の思いとの共通点に目がいってしまう
人は、自分にとって重要だと判断する情報を無意識に取り込んでしまいます。逆を言えば、重要でないと判断する情報は取り込まないようにしています。つまり、自分に都合のよい情報には目や耳が反応しないのです。
それゆえに、転職体験談にふれるとき、自分に都合の良い情報には好意的に反応し、共感してしまいます。
「あ~、この人の悩み、よくわかる。この悩みを解決して転職してうまくいっているならば、自分も大丈夫かもしれない。」
「この人が転職を決めた判断軸は、なんとなく自分に合っているような気がする。こう思えば、転職することに踏み切れそうだ。」
自分の思いと共通することを、無意識に、かつ、自分に都合のよいように取りこみ、それをあたかも「自分ならではの考え方」のように錯覚してしまうことが起こり得ます。
「藁にもすがる思い」に要注意
自分の行く末が明るくないときは、心に迷いや悩みを抱えるものです。こういうときに「転職」を考えるとき、自分の「判断軸」が揺らいでしまいがちです。
それが「藁にもすがる思い」につながります。
「藁にもすがる思い」は、自分の心の中に存在する揺らぎを解消したいという思いとなり、他人の転職体験談を鵜呑みにしてしまう「心のスキ」を生んでしまいます。
人の脳は、空白を嫌うと言われます。空白とは、考えがまとまらなかったり、文字通り思考停止の状態です。「心のスキ」は「空白」そのものです。
それゆえに、「他人の転職体験談」によって、「心のスキ」として存在している空白を埋めようと無意識にしてしまうのです。
他人の転職体験談を参考にしてはいけないのか?
転職を考えるとき、他人の転職体験談は先行事例として価値はあります。参考にしてはいけないというものではありません。
「禁じ手」であるのは、「鵜呑み」にすることです。
「鵜呑み」にしないためには、「他人の転職体験談」を読むときに、自分なりの「仮説」を持たなければいけません。「仮説」とは、転職体験談を書いた人が、どのような考え、転職のきっかけ、仕事や家族の環境であったのか、ということを想像することです。
自分自身と自分が立てた「仮説」を照らし合わせて、冷静に「他人の転職体験談」を読むのではなく、冷静に見極めるのです。
まとめ
「他人の転職体験談」は、それを書いた人の背景事情を、自分なりの仮説を踏まえて読み解かないかぎり、「鵜呑み」にしてしまうことになるでしょう。「鵜呑み」にしてしまうと、良い結果につながりません。
大切なことは、「転職」することで、自分が得たいと願っていることを丁寧に整理することことです。
つぎの3つの視点は、その整理に役立ちます。
45歳を過ぎて「転職」することが、自分にとってどのような価値や意味があるのか。
それによって、自分はどのように変わることができるのか。
自分の人生がどのように豊かな人生になるのか。
「他人の転職体験談」を参考にするならば、自分自身について、これら3つの視点をもとに見つめ直すことが大切です。
是非、手に鉛筆を持って、直筆で紙に書き出してみて下さい。脳が活性化して、モヤモヤした迷いや悩みも整理され、自分のことを冷静に見つめ直すことができますから。