企業の採用意欲が高まり40歳代の求人件数も増えつつありますが、45歳を過ぎた求人数は少なく、転職の機会を得ることは簡単ではありません。
ビジネス誌でも「中高年の転職必勝法」という切り口で興味深い記事が特集されていることからも、転職の機会を得るためのノウハウを求めている人が多いと感じます。
記事に特集されているノウハウは、たいへん参考になりますので、実践する価値はあります。
しかし、45歳を過ぎた転職では、「自分の棚卸し」を精緻にできているか否かが大切です。
そもそも、転職するには「自分の棚卸し」は必須になるわけですが、「45歳」という年齢を勘案すると「経験の重み」が相手に伝わるレベルで棚卸しておくことが重要です。
転職にかかわるノウハウをパソコンの機能にたとえるとアプリケーションソフトになります。一方、「自分の棚卸し」をたとえるとOSになります。
OSが起動し動かなければ、アプリケーションも作動しません。ゆえにOSをしっかりと組み込む必要があります。
「自分の棚卸し」を丁寧に時間をかけたとしても、その結果、アピールするポイントがズレて「勘違い」してしまうことがあります。
アピールするポイントを「勘違い」することは、45歳を過ぎた転職活動では避けなければいけません。
そこで、どうすれば「勘違い」しなくてすむかを、お伝えしたいと思います。
【目次】
その1「調整力」という勘違い
自分の仕事を振り返り、「調整力」があるとアピールする方がいます。
45歳を過ぎると、会社の中で関係各所との調整役を担う場面が増え、双方の利害を調整し仕事の方向づけをする機会が増えるからです。
この役割は、組織内においては必要不可欠であるため、転職後の会社でも通用すると考えてしまうからアピールしたくなるのでしょう。
しかし、その人がアピールする「調整力」なるものは、必ずしも再現性のあるものではありません。「調整力」の裏側には、その人の社歴、会社における地位、実績、人脈など、その人が在籍する会社でのみ通用するスキルであるからです。
転職後の会社で「調整力」を発揮しようにも、それを裏付ける根拠を示さない限り、採用にいたる可能性は伝わりません。
その2「目標達成力」という勘違い
「難しい課題を自分の力で乗り越え、設定した目標を150%超える実績をあげました。」
こういうアピールをする方は、目標を達成することをパーセンテージで表現しがちです。
しかし、真の目標達成力があるか見極めれることができないため、会社側からは軽くみられます。目標達成率が意味するインパクトが伝わらないからです。
たとえば、つぎの2例を見てみるとわかります。
①「営業利益目標100万円に対して、150万円の営業利益を達成しました。」
②「営業利益目標1億円に対して、1億5千万円の営業利益を達成しました。」
同じ目標達成率150%でも相手に伝わるインパクトは数字から明確な差となって伝わります。
また、数字の持つ背景によっても意味が変わり得ます。たとえば、事業を立ち上げた直後の数値ならば前進も重みが伝わりますし、事業が順調に回っている事業であれば後者はそれほど重くないときも判断されます。
数字を用いて自分の人材力を伝える場合、相手に数字の背景事情を踏まえて インパクトを与える必要があります。
その3 「支援力」という勘違い
「チームで業績を達成するために、自分のことだけでなく他のメンバーを支援しました。」
チームで働く力をアピールしたい方がよく使うフレーズです。
たしかに、チームで働く力は必要ですが、「支援」が文字通り「縁の下の力持ち」的なもののみを意味するならば注意が必要です。
45歳を過ぎた転職では「縁の下の力持ち」的な支援ができるということのみではなく、「チームを導く」というマネジメント的な役割分担支援ができることも求められるからです。
「支援」という単語は人としての温かみを感じさせますので、人間力をアピールするためには絶好の表現です。
しかし、求められる人材要件と照らし合わせると、必ずしも人材価値を表すことにつながらないということを認識しておかなければいけません。
まとめ
「自分の棚卸し」は、やみくもに取り組んでしまうと、迷路にはまりかねません。とくに自分一人で取り組むと第三者の視点に欠けるため結論が見えなくなりかねません。
調整力、目標達成力、支援力を人材価値として伝わると勘違いしがちです。
しかし、人材価値を裏付ける根拠とつながらないことが往々にしてあるため、採用する会社側からは人材として「薄い」印象を与えてしまいます。
「勘違い」を回避するためには、自分の「棚卸し」するための基準を持つことをおすすめします。
【人材価値】=(【基礎力】+【専門力】+【再現力】)×【人間力】
45歳を過ぎた転職では、「専門力」「再現力」「人間力」を丁寧に棚卸し、それぞれが転職後の会社業績にどのように貢献しうるかを端的に示すことが求められます。
具体的な進め方については、明日以降お伝えしていきます。