「日本を良くしたい。日本を元気にしたい。」
「世界で活躍する人を育てることに貢献したい。」
仕事をしていると、大きな夢を実現したいと感じるときがあります。その夢を追求することが自分のミッションであると感じ、現状を変えたいという強い気持ちを抑えることができなくなる。キャリアの転換期とは、こういう気持ちが芽生えたときにめぐってきます。
40歳を過ぎると、残された社会人としての期間を逆算するようになります。どうすれば自分を活かすことができるか、ということに意識がいくようになるのです。自分という存在を活かして、なにかしらの足跡を残したくなると、いま現在担っている仕事以外に活路を見出したくなるものです。そして、自分の目の前に現れた転職の案件を「運命的な出会い」と感じてしまうことがあります。
そう感じたときは、より慎重になることが必要です。「他人の芝生は青く見える」ということわざがあるように、往々にして熱い想いは自分の視野を狭くします。現状を変えたいという想いが強くなりすぎて、冷静さをもってとらえる姿勢がなくなるからです。
こういうときに効果的な自分に対する質問があります。
それは、 「それで、私は何がしたいの?」というシンプルな質問です。
最初に問いかけてでてきた答えに、 「それで、私は何がしたいの?」と重ねて問いかける。さらにでてきた答えにも、 「それで、私は何がしたいの?」と問いかえてみる。
この質問によって、自分が転職しようと考えている気持ちを、深く掘り下げるができます。深く掘り下げることで冷静さを取り戻すことができるのです。
「それで、私は何がしたいの?」という問いに、具体的に応えることができ、どんな困難があったとしてもそれを成し遂げたいと感じることができるならば、キャリアの転換期として成熟しているととらえることができます。つまり、転職という手段を選択しても後悔することはなくなります。逆に言うと、この状態でなければ、転職という手段は選択すべきではないことになります。
自分の人生を豊かにすることを通して、自分の仕事にかかわる人の役に立つことができるという確信が持てず、ただ自分だけがうまくいくことを思い描いてるときは、 「それで、私は何がしたいの?」というシンプルな問いにうまく答えることはできません。うまく答えることができないときは、冒頭に掲げた理念的な答えしか思いつかず、具体的なアクションに通じる答えがでてきません。
自分の心の中が「総論賛成、各論不明」という状態になっているときにキャリアを転換してもうまくいくはずがありません。自分の行く先は各論によって導き出されるものだからです。
もし転職すべきか否かで迷っているならば、 「それで、私は何がしたいの?」というシンプルな質問を自分に投げかけてみてください。その答えがあいまいなものだったら、今の仕事で自分を活かす道を見出してみてください。転職すると今までの自分を一旦ゼロクリアすることになります。文字通り新しい世界に飛び込むことになります。
「それで、私は何がしたいの?」という問いにあいまいな答えしかだせないようならば、今の仕事で自分を活かす道を見出すことの方が、自分のキャリアを一旦ゼロクリアにしなくて済む分、自分の人生を豊かにする道につながる可能性が高くなります。
転職はあくまでも手段です。
「それで、私は何がしたいの?」という自分への質問を通して、自分の転職(キャリアの転換期)の目的を、自分の言葉で具体的に語れないならば、転職という選択はすべきではありません。