「家族のためならば、皿洗いでも、何でもやりましたよ。」
「稼がなければ、家族を幸せにするために。」
「日本の文化に溶け込むためには、汗を流して、技術を身につけるしかない。最初からコックになるつもりではなかったんです。」
「それこそ、寝ずに働きましたよ。ご飯を食べるために。」
キャリアにかかわる仕事柄、経営者の方とお話しをすることを大切にしています。
今日は、横浜中華街でレストランを経営している陳社長とお話しする機会をいただきました。
陳社長は、30年前に中国から来日されました。来日当初は日本語もわからず、大変苦労されたとのこと。しかし、冒頭の言葉のように、その後、持ち前のバイタリティーで、一心不乱に働かれ、今では、経営者として成功されています。
そして、現在は45歳を過ぎた日本人を社員として複数名雇い入れされています。
そこで、どのような社員が成果をあげているか、ということについて、お考えを聞いてみました。
【目次】
1.下積みの大切さ
45歳を過ぎた日本人を社員のうち、今まで苦労を重ねてきた人は比較的早く会社に馴染み、成果をあげているようです。
陳社長はつぎのように表現されました。
「社会に出て、苦労していろいろとぶつかることから、勉強する。だから、強くなると思う。」
学歴にかかわらず、様々な経験を踏んできていると、働く上での地力が身についているからこそ、成果が上がるくということです。
社会人になってからの経験を評価されて中途採用されても、それまでの下積みの経験がないと、使える人材にはならないとの考えをお持ちでした。
2.臨機応変な対応の大切さ
陳社長は、「マニュアルに従って仕事をすることも大切だが、頭をフル回転させて考え、臨機応変に仕事を進めるチカラが欠かせない」と指摘されます。
マニュアルに従って仕事をすれば、失敗する可能性は低くなる。
しかし、保守的な姿勢からイノベーティブなアイデアは出てこない。
日本人は、あらかじめ答えが想定されることへの対応は上手いが、未知なる課題には手を出さないという印象があり、もったいないと指摘されます。
陳社長は、一度始めて、もし上手くいかなければ、臨機応変に課題に対応するチカラを身につけておくことが必要だとの考えをお持ちでした。
3.「何のために働くか」、自分の原動力を意識する
「雇われ社長と創業者の違いは何だと思いますか?」
「雇われ社長は、一生懸命に仕事をする。創業者は、本気で仕事をする。そういう違いがあると思います。」
「雇われ社長はいざという時に課題に保守的になり、踏み出すことができない。一方、創業者は、生活がかかっているから本気。いざという時は、思いきり踏み込む。そして、それがだめでもゼロから創り出せばいいと考える。」
「責任感の感じ方が異なると思うのです。」
中国から身一つで来日し、ゼロから今の地位を創り上げた陳社長の経営哲学です。
陳社長は、「家族を幸せにするため」という原動力があって、それを基盤に「安くて美味しい中華料理を提供する」「会社を支えてくれている社員の人材育成に力を入れる」というビジョンを創り上げたと言われます。
日本人社員のうち、成果をあげる社員は「何のために働くか」という自分の原動力が明確になっているとのこと。
このことから、誰かのためになることを原動力とすることは、結果的に自分のためにもなると感じました。
したがって、自分が働いた結果、誰を喜ばせたいか、誰を幸せにしたいかということをイメージし、明確化することが重要になるとあらためて感じました。
4.まとめ
陳社長に「仕事で悩んでいる人にアドバイスするとしたら、どんな言葉を投げかけますか?」と問いかけました。
陳社長は、つぎのように答えられました。
「悩む時間があるということは、余裕があるということ。」
「生活に困らないから悩む余裕があるのであって、本当に困っているなら、頭を使ってできることを考える。犯罪に手を染めないかぎり、何でもできるはず。」
「あれはやりたいくない。これはできない。と言い訳ばかりするから悩みが深くなる。目の前の自分にできることを何でもやり抜くことが大切。」
悩みの中にいる人にとっては、厳しい言葉のように感じられるかもしれません。
しかし、言葉の通じない異国で、幾多もの困難を乗り越え、その都度どうしようかと悩んだ末の言葉には、耳を傾ける価値があります。
今自分にできることを、精一杯やりきっているか。
自分に自問自答し、「今、ここで」を大切にすることが、キャリアを積み上げるためには必須であることを再認識しました。
修羅場をくぐってきた経営者の言葉の力に圧倒されました。