「なぜか自分は評価されていないように思うんですよ。」
Gさん(53歳、男性)から相談を受けました。Gさんは、ある食品メーカーで不動産事業に携わっていたもの、48歳のときに、人事異動で全く畑違いの部署に配置が変わりました。
Gさんにとって、その人事異動は納得のいくものではありませんでした。食品メーカーで働いているものの、不動産事業はその収益に大きな貢献をしていたため、相当の自負心を持っていたからです。
「このまま、くすぶってしまうのは、悔しいんですよ。」
お話を伺ってみると、私はあることに気がつきました。
人事異動に隠されたこと
Gさんは、自分の評価が低いことについて、直属の上司を超えて直接人事部に上申してしまったようです。
「上司に言ったってわかってもらえないなら、人事に行くしかないでしょ。」
「こんなにがんばって、長年経験しているのに、評価が低すぎると訴えたんです。」
「上司が自分をどの部分を見て評価してくれているのか、フィードバックもないからわからないんですよ。」
「こんなことを、人事部に訴えたんだです。」
冷静でいられなくなったGさんは、自分の実情を理解してもらいたくて、人事部に上申する行動をとってしまったのです。
人事に長く携わっていると、こういう行動をとる人を目にすることが往々にしてあります。やむにやまれない感情を落ち着けるには、時と場合によっては、人事部に上申することはあるでしょう。
しかし、この行動は時として、凶となることがあります。
Gさんがとった行動は、人事部には良い印象に映らなかったのだと、私は思いました。
なにが足りなかったのか
Gさんの行動がなぜ凶となったか。それは、Gさんが自分の評価が低いことを切々と訴えてしまったことにあります。Gさん自身に足りないことについての自覚はなく、低い評価を下した上司に対する不満と組織に対する不満を訴えてしまったということが大きく影響したのです。
誤解を恐れずに言うと、人事部には「不満分子」と評価されたのです。「不満分子」と評価されてしまうと、組織運営と秩序維持の観点で人事異動が発令されることはよくあることです。
若い頃ならまだ許される行動も、分別のある40歳を過ぎたビジネスパーソンでは許されません。
Gさんに足りなかったことは、つぎの3点にあります。
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自分を冷静に捉えられなかったこと
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冷静でいられなかったから、上司を飛び越えて人事部に上申したこと
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人事部に自分のことだけを伝えてしまったこと
まとめ
もし、あなたが自分の評価が低いと感じているならば、Gさんのような行動をとってはいけません。
どうしても、自分の評価に対して物申したくなったら、1日だけその決断を先延ばしにしてみましょう。
そして、その先延ばしした時間の中で、つぎのことを自分に問いかけてみて下さい。
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その決断で、自分が失うことは何か
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それを失ったとしても、自分は満足できるか
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自分はほんとうに付加価値を提供できているか
これら3つのうち1つでも自分に腹落ちできないことがあるならば、自分の評価に対して不服申立することはやめることを強くオススメします。
ちょっとだけ、時間をとめて、振り返ってみることが長いキャリアを考えるときにポジティブに影響するからです。
本日も、お読みいただきありがとうございました。
(追伸)
不本意な人事異動となったGさん。仕事を辞めるわけにはいかないので、自分の人材力を再確認していただくことを提案しました。不動産事業で培ったビジネスパーソンとしてのキャリアを、全く畑違いの部署で発揮するためです。
冷静に自分を振り返ったGさんは、苦労されながらも今新しい職場で奮闘されています。Gさんからいただいたコメントをご本人の了承をいただきましたので、最後にご紹介します。
「やってしまったことは仕方ない。自分の力を発揮する方策が見つかったから、トライアンドエラーを繰り返してやっていこうと思います。そう考えると、自分の新しい可能性に気づけたのかも。先が長い会社員人生、もう一踏ん張りしてみます。」